2018年3月、滋賀県守山市の河川敷で、頭部や手足のない女性の遺体が発見された。遺体は近くに住む58歳の母親で、同居する娘・あかりが死体遺棄などの容疑で逮捕され、その後殺人罪でも起訴された。9年間浪人し医学部を目指していた娘と母の異常なほど密接な関係の裏に何があったのか。

 2022年の刊行から累計22万部を突破した話題作、獄中の娘との書簡をもとに描いたノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』(著=齊藤彩、講談社文庫)より一部を抜粋して紹介する。(全4回の2回目/3回目に続く

写真はイメージ ©Masaharu_Shirosuna/イメージマート

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「母は、自殺しました。遺体は私がバラバラにして、現場に捨てました」

 逮捕された娘・あかりは、徐々に犯行について口にしはじめた。殺人ではなく、死体損壊、死体遺棄についてである。

「母は、自殺しました。遺体は私がバラバラにして、現場に捨てました」

 捜査員は物証の特定捜査に着手した。妙子の死体切断に用いた工具と、死体の上にかぶせていた園芸用土の入手先の特定である。あかりの供述によると、「剪定(せんてい)用ハサミ」「ノコギリ」「鉄の棒」の3点を自宅近くのホームセンターで購入し、その代金約1万円を母親名義のクレジットカードで支払ったという。供述に基づいてクレジットカードの利用履歴を調べたところ、

・サボテン楽切剪定鋏20

・シルキーズバット

・千吉レジャー鉈角型SG

 の3点を、1月20日午後、合計1万767円で購入していることが判明した。しかし、これらの工具はすでにあかりが破砕ごみとして廃棄していたため、発見できなかった。

 さらに、2月20日に近くの別のホームセンターで14リットル入りの有機培養土2袋を購入していたことが判明する。あかりは、

「母の死体を切断するときに着用したのは、大学の実習のときに使用したナイロン製の使い捨てガウンと、薄手のゴム手袋です」

 とも供述していたが、これらの物証も、事件後に燃えるごみとして処分されており、発見できなかった。一連の証拠物が隠滅(いんめつ)されていることに、捜査員はあかりによる計画的な犯行という印象を強く抱いていた。