2018年3月、滋賀県守山市の河川敷で、頭部や手足のない女性の遺体が発見された。遺体は近くに住む58歳の母親で、同居する娘・あかりが死体遺棄などの容疑で逮捕され、その後殺人罪でも起訴された。9年間浪人し医学部を目指していた娘と母の異常なほど密接な関係の裏に何があったのか。

 2022年の刊行から累計22万部を突破した話題作、獄中の娘との書簡をもとに描いたノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』(著=齊藤彩、講談社文庫)より一部を抜粋して紹介する。(全4回の3回目/4回目に続く

写真はイメージ ©Masaharu_Shirosuna/イメージマート

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母親に対して明白な殺意を抱いたきっかけ

 一審ではあくまで殺人を認めようとしなかった髙崎あかりだが、二審の大阪高等裁判所では、一転して自らが母・妙子を殺したと述べた。

 あかりは母親から長年にわたって執拗な干渉と虐待を受ける生活を強いられ、高校卒業後9年間にもわたって母の監視下で「監獄のような」浪人生活を送っていた。

 医大の看護学科を卒業し、ようやくその束縛から逃れようとしたところで、今度は助産師学校を受験するように強いられ、「とても耐えられそうにない」と思ったが、そのストレスを、誰にも相談することができなかった。

 事件の1ヵ月前の2017年12月20日ごろ、母との連絡用以外の別のスマートフォンを密かに隠し持っていたことが母に見つかり、激しい𠮟責を受けた。母・妙子はスマホを叩き壊し、あかりに土下座して謝罪するよう強いた。

「そのとき、私は、スマートフォンだけでなく自分の心まで母に叩き壊されたような気持ちになりました」

 とあかりは弁護士に話している。あかりはこのころから、母親に対して、明白な殺意を抱いた。