ギリギリまで粘って、貯金がすべてなくなってからギブアップするのでは遅いんです。店を畳むにも結構なお金がかかりますし、次の人生を歩むための資金も必要になってくる。従業員の今後のことを考えても、ちゃんと給料が払えているうちに閉店を伝え、転職のための準備期間もしっかり与えたい。そう考えたら、残念だけれど、ここで幕を引くのが正解ではないだろうか?

 70歳まで現役でステーキを焼くことを密かな夢として抱いてましたが、そんな夢なんか簡単に砕け散るほどコロナ禍の現実は残酷すぎました。

従業員たちの猛反対で閉店、撤回! そして……

『ミスターデンジャーは閉店することになりました』

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 私は意を決して従業員たちに伝えました、1日も早く伝えることがオーナーとしてできる最後の仕事だ、と。しかし、従業員たちは納得してくれませんでした。

「どうしても経営が苦しいんだったら、僕たちの給料を削ってください!」

「この店が無くなってしまうことのほうがよっぱどつらい」

「オーナー、一緒に頑張りましょうよ!」

 びっくりしました。いまどき、こんな話ありますか?

 従業員にとって、この店は単なる職場ではなく「家」のような存在になっていたのです。うれしくて涙が出そうになりましたが、それでも現実を考えると、やっぱり店を畳むのがベターな選択だと心は決まっていました。

「みんなの気持ちはうれしいけれど、みんなのためにも店を畳むべきだと思う。もう、俺はじゅうぶん働いたし、妻と一緒に実家のある田舎に戻って、しばらくはのんびり過ごしたいと思っている。みんなも早く次の道を決めてください」

 そう伝えると、ある従業員が泣きながら、こう言いました。