退役軍人に接吻をかます者まで…
ノルマンディーの町村のカフェやレストランは、本物の第82空挺師団と第101空挺師団の将兵でぎゅうぎゅう。グレーを基調としたデジタル迷彩服に、当時から空挺部隊で世界共通のマルーン(えんじ)色のベレー帽に身を包んでいる。
さらには、1944年当時の軍服に身を包んだ若い女性兵士の姿も。退役軍人を見つけて駆け寄り、彼らの武勇伝に耳を傾けると、花束を差し出して接吻をかます女性までいた。
かわって敗戦国の日本人が旧軍の軍装で小銃を持ち、外国で同じことをやれば、とんでもない批判を浴びるはず。さらにドイツ国内では、ナチスの軍服を公の場で着るだけで違法になるはずである。これが戦勝国の常識なのであろう。
第82空挺師団、第101空挺師団がどれほど自他共に認める精鋭部隊であるか、ご理解いただけたであろうか。彼らが出動したという情報が流れただけで、敵は上空から目を離せなくなり、夜も眠れぬ恐怖を植え付けられるのである。本当に精強な軍隊とは、それを実際に使わずとも、使うと見せるだけで敵が戦意を喪失し、戦いを避けるようになってくれるもんである。
だからこそ、どこの国の軍隊も一見ばかばかしく見える訓練を繰り返し続け、練度を維持・向上させているのである。それこそが敵の侵略を思いとどまらせ、戦争を防ぐ、いまや唯一の方法なのである。
日本は平和のために何をすべきか
4月8日、米軍とイランは2週間の停戦に合意した。また、イランの外相によれば、ホルムズ海峡は安全な通行が可能になるという。
だが、依然として情報は錯綜している。イランが米国に提示したとされる10項目の計画には、「イラン軍と調整のもとでのホルムズ海峡の通航管理」や「イランとオマーンによる通航料の徴収」、さらに「中東の全基地からの米軍戦闘部隊の撤退」などが含まれていると報じられているが、トランプ大統領が大人しく条件を飲むとは思えない。実際、中東では第31海兵遠征部隊や第82空挺師団が今なお待機中で、トランプ大統領は撤収命令を出していないのである。
日本政府は「前向きな動きを歓迎」としているが、イランに手数料を払えば、ただでさえ高いガソリン代はどうなるのか。よしんば守られたとしても、あくまで「2週間の停戦」である。2週間後の保証はどこにもないのである。
もし交渉が決裂し、米軍が海から第31海兵遠征部隊をイランに上陸させ、空から第82空挺師団を降下させれば、イランに勝ち目はないであろう。だが、それでイラン革命防衛隊がやすやすと白旗上げるとも思えん。戦争はまさに「始めるのは簡単やが、終わらせるのが難しい」のである。そもそも、日本の4.4倍以上の国土のほとんどを砂漠が占め、そこに約9000万人がくらすイラン全土を制圧するのはとても無理である。
ホルムズ海峡の実質封鎖が再開すれば、ガソリンは値上がりし続け、やがて備蓄原油も底をつく。我が国は、とてつもなく高い原油を中東以外から調達しなければならない。原発再稼働にも踏み出し、そのうえ国民にも徹底的な節電が求められるかもしれない。そうなれば、国民はまともな経済活動を送れるのか。
米軍第82空挺師団や第31海兵遠征部隊が地上戦に参加することなく、イラン国民もこれ以上の戦禍にまみれんことを祈るばかりであるが、祈るだけで平和を得られれば世話もない。
天に祈りが通じ、我が国の平和と安全安心な暮らしが守られれば、自衛隊も警察も必要ない。しかし、そうはならんのが現実である。
情勢不安定が続く中東で、日本はみずからの部隊をどう用いるのか。
撮影=宮嶋茂樹



