支配の根底にあるのが「この子のため」
響子 就職準備には乗り遅れて、母に相談したら、「就職なんてせんでいいわ」でそのまま。「大きな会社の駒になったってしょうがないんだよ」と言ってましたね。ぶらぶらしてるなら私の秘書をせよ、となりました。
桃子 給料はどうだったの?
響子 もらっていたけど、いくらだったか。大学の時のお小遣いは三千円だったけど、それよりは多かったと思う。
桃子 少な過ぎる。いつの時代の話?
響子 バブル前夜で、母はバンバン書いて、儲けてました。「娘と私の部屋」から始まった「ノンノ」の連載とかね。つらかったのが、お勤めなら九時から五時だけど、母とだと一日、二十四時間なんですよ。
桃子 身の回りにいる人間はこき使って当たり前という考え方だからね。
響子 「あんたは別に何にもしてないんだから、十万円なんてあげられない」とか、すぐそういう計算になる。
桃子 そういうのを、響子さんはなんだか飲み込んじゃうんですよ。
響子 確かにそうだね。
桃子 祖母は働くことで自己実現をしていくという発想は全くない。
響子 自分のしたいことはしなさい、とは言うんだよね。
桃子 だけど実際にやろうとすると、止められる。母さんが芝居を上演した時もそうだった。
響子 自分で脚本を書いて上演したんです。経費を生前贈与として母から譲られたお金で賄ったら、「こんな道楽して。もう二度とするな」という反応でした。
桃子 つまり何もするな、と。
響子 支配の根底にあるのが、「この子のため」だとはわかるんです。だから逆らえなかった。母の中では支配欲と愛情が、どこで分けていいかわからないほどくっついてしまっている。しかも活火山の人だから、心配を始めるとどんどん大きくなる。でも、そういう形でしか愛せない人だという可哀想さも、私にはすごくあるんです。
桃子 私が祖母をクールに見ているのは、十代の頃の体験があるんです。痛いオタク少女だった私は精神的に不安定で、いろいろ苦しんだけど、当時の母はそんな私を受け入れられなかった。それはそういう人間を育てた祖母のせいだ、と思っていました。
響子 あの頃は母との関係、娘との関係、その間に挟まれていました。私は母に言われたことは割ときっちり守ってきて、それが正しいと思っているから、娘にも言うわけです。だけどある時、それはもう母と私の代で終わりにしようと考えるようになりました。
