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「このまえ、ぼくらを殴った。あの人が来たよ」
それはとても静かな夕暮れだった。
昼間の燃えるような熱気がまだ感じられる、2025年8月28日の午後6時半ごろのことだ。
クルド人の30代の男性ベルザンは、家のすぐ近くの小さな公園のベンチで、次男の小学校5年生のロラン(10)と夕涼みしながら語り合っていた。ロランは夏休みが終わり、前日から2学期が始まったばかりだった。「席替えとかあったの?」。そんなことを話していると、ロランが急におびえた表情になったのだ。
「あの人だよ。このまえ、ぼくらを殴った。あの人が来たよ」
父が前をみると、60歳前後にみえるTシャツに短パンをはいた男が20メートルほど向こうに立っている。
「またお前か。お前らなんか早く国に帰れ。強制送還されればいいんだ」
男は、乱暴な口調で言いながら近づいてきた。
「近くに来ないでください。なんで近づいてくるの」
父は警告したが、男はどんどん近づいてきた。父親は知人と、外国人支援団体の関係者にスマートフォンで連絡した。
「変な男にからまれてるんです。すぐ警察呼んで!」
そして、相手を牽制しようとスマホで動画の撮影を始めた。ベンチから立ち上がり、息子のロランを背中に回して守ろうとした。