だが、その後も3ヵ月にわたり父は収容され続けた。解放された後も、難民申請は何度も不認定になり、在留資格は与えられないままだ。就労は禁止、移動も厳しく制限され、健康保険もない「仮放免」の状況が続いている。

難民の子どもたちの居場所は

 それでも、はじめの数年間は、ベルザンは「日本に来て良かった」と思っていた。

「とても親切な人が多い。子どもがかわいい、と言って寄ってきてくれた」

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 だが、2023年ごろから、「川口の人は冷たい」と感じるようになった。入管難民法改正論議を機に、クルド人への誹謗中傷が激しさを増した。ちょうどその時期に川口市立医療センターの周辺でクルド人同士の衝突騒ぎがあったことも影響している。クルド人同士の傷害事件で傷を負った複数のクルド人がセンターに搬送され、たくさんの親族が周辺に集まり警察が出動する騒ぎになったのだ。

「近所の人に『おはようございます』と言っても無視されるようになった。子どもも学校で仲間に入れてもらえず日本人の友達ができない」

 そして今は、ロランが近くに住むあの男がまた襲ってくるのではとおびえ、眠れない夜が続く。ベルザンは「すぐにでも別の街に引っ越したい」と話す。