水谷豊が伊藤蘭と初めて顔を合わせたのは、水谷が23歳のとき。大好きだったキャンディーズのメンバーに伝えられたのは“たった一言”だった。
その出会いからおよそ15年後、2人は夫婦となる。水谷豊が初めて自らの言葉で語った『水谷豊 自伝』(新潮社)より、最愛の妻・伊藤蘭との出会いと結婚までの軌跡を紹介する。(全4回の1回目)
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ファンだったキャンディーズの伊藤蘭と出会って
俳優としては中途半端で難しい時期だったという30代後半を迎えた水谷に、プライベート面で春が訪れようとしていた。
ミッキー・マッケンジーとの離婚では様々な痛手を負ったものの、騒動の間にも心惹かれ、交際を考えるようになった女性に出会っていたのだ。
日本テレビ系列のドラマ『あんちゃん』に続き、『事件記者チャボ!』でも共演した伊藤蘭である。水谷は伊藤が3人組のアイドルグループ・キャンディーズのメンバーとして活躍していた頃(1972~78年)からのファンだった。
「初めて蘭さんに会ったのは、僕が23歳の頃で、『傷だらけの天使』が終わったあと。『週刊平凡』の表紙の撮影でしたね」
撮影の依頼があったとき水谷は、「駅の売店とかに、僕が表紙の雑誌が並ぶのは恥ずかしいから嫌です」と断わった。だが、編集部から、キャンディーズと一緒の表紙ならどうか、と打診されて、気持ちが変わった。
「僕にとっては初めての表紙撮影で、緊張しつつも、キャンディーズに会ったらいろいろ質問をしてみようと思い、前日は頭の中で質問や話し掛ける内容をイメージしていました。ですが、いざスタジオで撮影が始まると、全く質問できるムードではなく、どんどん撮影が進んでいく。あれよあれよという間に撮影が終わり、『豊ちゃん、お疲れ様でした。もう帰ってもいいですよ』という担当者の冷たい声が聞こえて」
キャンディーズはすぐにスタジオを出て行き、ひと言の会話もできなかった。
「あまり狼狽えてもおかしいと思い、僕も『お疲れ様でした』と言って、一旦はスタジオを出たのですが、そのまま帰る気にはなれず、担当者に『3人に挨拶をしたい』と話すと『そんなこと気にしなくて大丈夫だよ』と。そこを粘って、キャンディーズの3人を玄関まで連れて来てもらったんです。勇気を振り絞って発した言葉が『握手してください』でした」
