AIブームはいつ終焉を迎えるのか? 指数をけん引し続けるエヌビディアの株価は“バブル”なのか? エミン・ユルマズ氏のインタビューを文春MOOK超インフレ時代を生き抜くための新・投資入門より一部抜粋し、過去の歴史を踏まえた見解を聞いた。(全2回の2回目/最初から読む

◆◆◆

明治維新の引き金は「金銀交換レート」の歪みだった

――そして話は日本に及びます。エミンさんは「マネタリーシステムの歪みが明治維新を生んだ」と分析していますね。

エミン これは日本の歴史教育ではあまり語られませんが、非常に重要な視点です。幕末、日本国内の金銀の交換レートは「1:5」でした。しかし、当時の世界標準は「1:15」。この差に気づいた外国人が何をしたか。

――安い銀を持ち込んで、日本の金を根こそぎ持っていった。

エミン その通りです。日本で銀を金に換えて海外へ持ち出すだけで、資産が3倍になる。この凄まじい「裁定取引※1(アービトラージ)」によって、日本の金は激しく流出しました。これが国内の物価高を招き、人々の幕府への不満が爆発した。「ええじゃないか」運動などの社会混乱の背景には、このマネタリーシステムの歪みによる生活苦があったんです。

――経済的な混乱が、明治維新の背景にはあったわけですね。

エミン はい。しかし日本が凄かったのは、そこからの立て直しです。税制を改革して政府の財政を安定させ、渋沢栄一らが第一国立銀行(現在のみずほ銀行)を設立し、その後、日銀による通貨発行権の独占と信用保証を確立しました。また、日本の財閥は一社独占のビジネスではなく、複数の企業が競いあう「オリゴポリ(寡占)」の構造だったこともプラスに働いた。これらの要因が、日本の近代化を加速させたんです。

 

エヌビディアは「バブル」――AIブームの行く末

――ここからは現代の経済に目を向けていきましょう。今、マーケットの最大の関心事はAI、特にエヌビディア※2を筆頭とするAI半導体のブームです。エミンさんはこれをどう見ていますか。

エミン 「すべてのバブルは崩壊する」というのが私の持論です。過去の歴史を見ても、チューリップ、ミシシッピ、ドットコム……どれも同じ道を辿りました。そもそもエヌビディアという一社の時価総額が日本のGDPを超えているのは異常です。

――エヌビディアの決算自体は非常に好調ですが、それでもバブルと言えるのでしょうか。

エミン 決算が良いこととバブルかどうかは別問題です。バブルとは、今の好調が「永遠に続く」という楽観的なシナリオが前提になっている状態を指します。現在、エヌビディアの半導体は凄まじい利益率を誇っていますが、グーグルなどが自社製チップの開発に乗り出しているように、独占状態は長くは続きません。

――かつてのドットコム・バブル※3の際も、光ファイバーなどの設備投資が先行しすぎました。

エミン そうです。AIも今はデータセンターへの莫大な設備投資が先行していますが、正直、事業者が考えているほどのスピードでマネタイズできるとは思いません。これは単純にちょっとした計算があって、これまでのデータセンターへの投資を回収するには、少なくとも向こう5年間でAIを有料で使う人たちがNetflix人口と同じくらい――3億人程度になる必要があります。月額2万〜3万円払う人たちが。それはちょっと現実味がなく、2026年頃には、この設備投資過剰のツケが回ってくる可能性があると考えています。