――依存によるトラブルなどはありましたか?

キマノー 薬物使用者のすべてが重度の依存者というわけでもなくて、自分も大麻が週1、LSDが月1くらいの“ライトユーザー”でした。

 ただ薬物界隈は人間関係のトラブルが多いのは確かです。売人はみんな半グレみたいなもんだし。

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 あとは逮捕も怖かったですね。大麻を買いに行った帰りに職質されて警官20人くらいに取り囲まれたときは焦りました。買ったばかりの大麻をトイレに流して、その時は捕まりませんでしたが。

 

――それでも引き返せなかったのはどんな理由だったんですか?

キマノー 「失うものも目指すものも特になくなってしまったから」というのはあった気がしますね。

 尊敬してた人は失踪し、真面目に生きる最後の理由だった恋人には振られ、夢だった料理人は諦め、親とは険悪、バイトも嫌いではなかったけどルーティンワーク。全体的に惰性で生きている感じで、いつ捕まってもいいし、なんなら死んでもいいとも思ってました。それでもなんとなく現状は退屈で、今この瞬間が楽しければそれでいい、といった刹那的な考えだったんです。

成人式には古着物屋で買った振袖で出た。同級生には受けたが、元恋人には笑われた

「薬物を使うことで、はじめて『普通の人間』になれた気がした」

――薬物を使うことで失うものに価値を見出せなくなってしまった。

キマノー あとは薬物を使うことで、はじめて「普通の人間」になれた気がしていたんです。自分以外の人間がどうしてその場のノリや感覚で動けるのかが小さい頃からずっとわからなくて、会話のパターンを覚えてその場をやり過ごすことしかできませんでした。

 でも薬物を使うと自分の感覚以外のことが全部なくなるので、他の人と同じことができているような感じがしたんだと思います。

――生活に支障はなかったのですか?

キマノー 意外と生活できちゃってたんですよね。20歳からはボロアパートで一人暮らしを始めたんですけど、隣の独居老人は夜になると叫ぶし、上の階のカップルの夜の声も大きくて、僕が薬でおかしくなって部屋の家具をひっくり返したりしていても大した騒ぎにはなりませんでした。バイトにも通えてましたし、金銭的にも月2万円くらいだったので。

フレンチトーストを食べたがまったく違う感触があったという、「食感が狂う」。

――それで逮捕されるまで止まれなかった。

キマノー そうですね。逮捕されたのは20歳の8月で、大麻仲間の同級生から「立川の売人に紹介してやるよ」と誘われた帰り道でした。

 夜の11時に同級生が運転する傷だらけのアルファードで立川まで行ったら、繁華街のバーにいたいかにもな感じの売人が、僕の右手に野球ボールくらいの大麻の塊をドカンとくれました。家まで送ってもらう途中に、甲州街道で後ろのパトカーから呼び止められました。