さらに西ドイツで出会った「家庭用にコーヒー豆を挽いて売るコーナー」が、喫茶とコーヒー豆販売というスタイルに、スイスで出会った「清潔で機能的な焙煎工場」が徹底した品質管理と独自の焙煎技術の根幹となりました。ヨーロッパ旅行で得た鳥羽の気づきは、後のドトールの方向性に大きな影響を与えたのです。

ドトールが1杯150円でも利益を上げられた理由

1970年代、物価高と不況で人々の財布の紐が固くなっていく中で、「出勤前にさっと寄れる、安くておいしいコーヒーショップを作る」というアイデアが生まれます。

そして1980年、原宿にわずか9坪の「ドトールコーヒーショップ」1号店が誕生します。コーヒー1杯、150円。これは、鳥羽が「毎日気軽に飲める価格」を追求して導き出した価格設定でした。徹底した自動化と人件費削減を行い、こだわりの味を守りながら低価格コーヒーの提供を実現し、大ヒットとなりました。

ADVERTISEMENT

この価格でもビジネスが成り立ったのは、ドトールがもともと焙煎業者であり、「煎りたての豆の販売」をしていたからです。鳥羽の西ドイツ視察の経験がここで活きています。一杯のコーヒーの利益率は低くても、レジ横で販売していた焙煎したての豆は、非常に利益率が高かったのです。

もし大手の焙煎業者が喫茶事業に参入していたら、きっとドトールは蹴散らされていたでしょう。しかし、大手の焙煎業者はすでに他の喫茶店チェーンに豆を卸していたので、喫茶店側からの反発を恐れて参入できませんでした。

つまり、ドトールは焙煎業界ではアウトサイダー、喫茶事業者としても新規参入者であったからこそ、結果的に「焙煎業者が経営する喫茶店」というブルーオーシャンを独占できたのです。

ドトールは「必要の趣味」の世界

近年、コーヒー業界にはさまざまな変化が訪れています。サードウェーブ系コーヒー店は、生産方法や鮮度にこだわり、価格がドトールの2〜3倍ということもあります。新たな外資系チェーンも日本に進出してきています。コンビニでも、挽きたての豆で手軽にコーヒーを作れるようになりました。マクドナルドなどのファストフード店も低価格コーヒーの販売を始めました。