著者は朝日新聞のベテラン校閲記者。すでに文章術の本を何冊も手がけているが、本書はやや異色作。企画の発端は、学生向けの就活支援講座の講師や会社の採用担当として、若い学生達がES(エントリーシート)の執筆に苦戦しているのを目にしたことだという。
「おもしろい体験をしている子でも、なかなかそれを上手く文章に落とし込むことができないのは、よくあることだそうです。ESが上手く書けないというだけで、後の人生を大きく左右する入社試験で損をするのは勿体ない。なんとかしたいと考えるうち、本書の企画が生まれました」(担当編集者の斉藤俊太朗さん)
著者とデザイナー、編集者が一丸となり、活字慣れしていない読者に届くよう、工夫を重ねた。ESの執筆に悩む弟子を、ほんわかとした雰囲気の師匠が教え導く物語仕立ての本文に、シンプルな例題と解答が適宜挿入される。色使いや挿絵、レイアウトもポップだ。
「ひとつひとつ項目を短く区切り、本のサイズも持ち運びやすさを考慮して決めました。移動の合間などのちょっとした空き時間に、サッと開いて読める本にしたかったんです」(斉藤さん)
今年7月には、小学生に向けた類書の絵本『クレオとパトラの なんでナンデさくぶん』を刊行。著者は書く技術を広めることで、就職に限らず、その人が自分らしさ、自分の望む生き方を言葉で掴み取れる社会を願っているかのようだ。
2017年4月発売。初版5000部。現在19刷8万4000部