彼ならこの手を見てなんと言うだろうか

 藤井聡太名人に糸谷哲郎九段が挑戦する第84期名人戦七番勝負第1局。

 振り駒で先手となった糸谷の初手は端歩。彼ならこの手を見てなんと言うだろうか?

糸谷哲郎九段(写真提供:日本将棋連盟)

 名人戦2日目、4月9日、私は対局場である「ホテル椿山荘東京」に向かった。控室に入り、立会人の森内俊之九段、朝日副立会人の佐藤天彦九段、毎日副立会人の近藤誠也八段、朝日新聞の観戦記を務める島朗九段、現地大盤解説の藤井猛九段と内山あや女流二段に挨拶をする。

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 そして記録係の山口裕誠三段、大盤解説会パソコン操作担当の入馬尚輝三段らと検討する。藤井の中央を厚くした構想が秀逸で、「名人ペース」と皆の意見は一致した。

はにかみながら現れた山崎

 私は、彼が必ず来るだろうと思っていた。そして、やはり来た。はにかみながら「ちょっと旅行のついでに」「椿山荘に来るのは初めてなので」と言いながら、糸谷の兄弟子、村山の弟弟子、山崎隆之九段が。

 森内も藤井猛も近藤も、誰も驚いていない。「やっぱり来たか」という表情だ。

山崎隆之九段 ©︎勝又清和

 私は2年前の棋士総会のことを思い出した。顔を合わせた糸谷に「昨日、棋聖戦(第95期第1局、藤井聡太棋聖対山崎八段)の現地に行っていたね」と聞くと、「棋士総会のついでに」と笑っていた。木更津は、大阪から東京のついでに行けるところではないだろうに。どれだけ兄弟子を慕っているんだと。

 糸谷は、続く新潟の第2局も、名古屋の第3局も、「旅行のついでに」と言い訳しながら訪れていた。