何気なく口にする「Nワード」
トランプは気に入らない相手の名前をもじったあだ名を作り出し、繰り返し使うこともする。
トランプ批判の急先鋒であるカリフォルニア州知事のギャヴィン・ニューサムのことは、「Newsom(ニューサム)」をもじった「Newscum(ニュースカム)」と呼ぶ。「scum」は本来は液体に浮かぶカスなどを指すが、それが転じて「クズ」といったニュアンスの悪口として使われる言葉だ。
ニューヨーク・タイムズの記者、マギー・ヘイバーマンをトランプは、「マギー(Maggy)」をもじって「Maggot(マゴット)」と呼んだ。「maggot」はウジ虫のこと。
トランプは全く不必要な文脈で、あえて「Nワード」を使うこともしている。昨年、「ロシアのメドベージェフ前大統領が、何気なく『Nワード』(核!)を口にして~」とポストしている。「核(Nuclear)」を意味もなく「Nワード」と書いたのだった。
「トランプ語」が一般市民の心を惹きつけた理由
トランプの言語パターンは、こうした稚拙な悪口の多用だけではない。単純な文法の短い文章を好み、これが「一般人にも分かりやすい」と評されることがある。そこから逆に「トランプの言語能力は小学4年生レベル」とも言われる。いずれにしても大統領としては異例の「トランプ語」を、複数のメディアや言語学の専門家が解析しようとしてきた。
その一つ、バーミンガム大学のスーザン・ハンストン教授は、オバマ大統領(2009)とトランプ大統領(2017)の就任演説を比較している。オバマに比べるとトランプは一つひとつの文章が短く、文法は単純であり、全体の単語数も少ない。ここまでは英語話者の多くが気付いていることだ。
しかし、ハンストン教授は興味深い指摘を行っている。2人とも演説で教育や産業などアメリカの国内問題を取り上げているが、トランプは「我々(アメリカ人)」を、そうした問題の犠牲者として描いている。この話法が、勤勉なのに報われず、生活苦にあえぐ一般市民の心をトランプが引き付けた理由の一つと思われる。
教授は2人の顕著な違いの例として、テロについての描写を挙げている。オバマは「我々の精神はより強く、決して折れることはない」と、アメリカ人がテロに屈しないことを訴え、トランプはテロリストを「過激派イスラム」と特定した上で、「これを地球上から完全に根絶する」としている。
トランプは第2期の公約「戦争をしない」を覆したとして今、MAGAからも批判されているわけだが、第1期の就任当初から戦争回避ではなく、反イスラムで、かつ好戦的であったことが分かる。(つづく)
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