自分の中での歯車がはまった瞬間

――現場に入られる時には、迷いは晴れていましたか?

山田 撮影の初日に挑んだのが、試衛館で(鈴木伸之演じる)近藤(勇)さんと戦うシーンでした。そこで歳三は「弱けりゃ死ぬ、それだけのことだろ」と啖呵を切るのですが、その時に「ああ、僕も歳三と同じで、戦うことに血が滾るし、命を燃やすのがきっと好きなんだろうな」と実感したんです。

 その後の「誰にもできねぇことやんのがかっけぇんだろうが!」という叫びがまたすごく響いて。……自分で言うのも烏滸がましいのですが、これだけハードなスケジュールをずっと走り続けている人って、もしかしたら、そんなに多くないのかなと思うんです。

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――尋常ではないですよ。

山田 いったん立ち止まるべきじゃないかというモヤモヤもあったけれど、もうそこは無視する。考えない。山田裕貴という人間だから、がむしゃらに走り続ける生き方になっているんだろうし、だからこそ、孤高のバラガキだった土方歳三という男に役として出会ったのだろうし。

 幕末の時代はきっと「明日死ぬかもしれない」という出来事の連続だったと思うんです。なら、そういう人を生きるのに、僕はちょうどいいかと。「余計なことは全部捨てて、ただ作品に真っ直ぐ向き合えばいいんだ」と自分の中での歯車がはまった瞬間でした。

 それに『ちるらん』という作品に向かって一緒に走ってくれる仲間が大勢いてくれて、それが何より大きかったです。

『ちるらん』の現場に入るまでは、とても強く、孤独を感じる日々だった

――そこも土方とどこか重なりますね。たった独りで生きていた彼を変えたのは、試衛館で出会った仲間たちでした。

山田 そうなんです。『ちるらん』は新撰組の善と悪を問う物語でもありますが、僕もそれに通じることを深く考えていた時期でした。「僕が守りたい正義とは何なのか」「僕はこれからどこへ向かうべきなのか」という問いにずっと向き合っていたんです。なんでしょうね……、『ちるらん』の現場に入るまでは、とても強く、孤独を感じる日々でした。

「原色美男図鑑」アザーカット/撮影 神藤剛

――「孤独」ですか?

山田 『ちるらん』に限らず、これまでの撮影の現場では一切感じたことはないです。スタッフの皆さんやキャストの方々と、心をひとつにして「この作品を絶対に良いものにするんだ!」と命懸けで突き進めるので。

――全員で同じ船に乗って、目指すべき方角を共に見つめられると。

山田 はい。だから外の現場には「仲間」がたくさんいる。でもそこを離れれば、僕もみんなも結局ひとりの人間です。誰もが「人生の主人公」を生きているわけなので、他人のために命を懸けられる人はめったにいない。