――実体験ではありませんからね。

山田 はい。タイムスリップしてこの目で見ることができない限りは、推測や憶測を信じないようにしています。鵜呑みにしない、という表現の方が近いかな。

 俳優をやっていると、とくにその姿勢は大切だと感じます。どんな役のことも100%はわかってあげられませんから、理解した気になってはいけない。そこはちゃんと忘れずにいたいなと思います。そもそも現実の世界でも自分のことすら完全にはわからないじゃないですか。

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喧嘩殺法から「武士になったな」と感じられる剣になるまで

――「わからない」ゆえに、役に真摯に向き合えるのですね。『ちるらん』は殺陣においても規格外で、肉弾戦のように超高速・超高密度で、感情のうねりが伝わってきます。「ジャパニーズ・ソード・アクション」と銘打ったこの殺陣は、どのように生まれたのでしょうか?

山田 それはもう、園村(健介)アクション監督のおかげです。歳三の戦い方って、最初は本当に喧嘩殺法なんですよね。

――金的への攻撃も辞さないという。

山田 そうです(笑)。それが最後の戦いでは「うわ、武士になったな」と感じていただける剣になっている。歳三の成長の流れまで表現する、素晴らしいアクションを作ってくださいました。プロローグの「江戸青春篇」だけでも、後半の(安藤政信が演じる田中)新兵衛と橋の上で一瞬対峙するあたりでは、もうだいぶ型が出来てきていますしね。バラガキから武士への変化を楽しんでいただけたら嬉しいです。

――言葉だけでなく、剣を交わすからこそ、感じられるものはありますか?

山田 ほんと、楽しいです。無駄なことを考えず、己の体を信じるのみ。やっていくうちに見えてくると言いますか、ああ、「刀が見える」ってこういうことなんだろうなと。生死を懸けていた「本物の武士」の領域には絶対に入れませんが、その片鱗を齧ったくらいの気持ちは味わえました。

 それにアクション練習は人間性がものすごく出るんです。そこがまた面白い。例えば(佐々木只三郎役の)金子(ノブアキ)さんは、まるでコットン100%みたいな優しい方なのですが、アクションではめちゃくちゃ力強くて。「痛くなかった? 大丈夫だった?」ととても気遣ってくださるので、僕も「大丈夫です」と答えつつ……、実は痛い時もありました(笑)。でもやっぱり痛みを感じないと、こちらも次の刀を出す時に力がグッとこもりませんから。