東大出身エリートvs叩き上げ

そして昨年5~6月、吉野家HD、ゼンショーHDはそろって新社長が誕生した。

吉野家HDの社長に就いた成瀬哲也は中京大に入学すると同店舗でアルバイトを始めた。3年の時に大学を中退し社員となったので、学歴は「高卒」となる。前社長の川村泰貴会長も高卒でバイトからのスタートというキャリアで、安部から3代続いて高卒(大学を卒業していない)→バイト→社長という異色のキャリアだ。

他方、ゼンショーHDはどうか。小川賢太郎も東大中退で「高卒」となるが、新社長になった賢太郎の次男・洋平は父と同じく東大に合格し、こちらは卒業している。社長交代は1982年の創業以来初めてである。教養学部を卒業後は財務省に入省したエリートだ。といっても、「東大法学部出身が幅を利かす財務省にあってはそれほど目立つ存在ではなかった」(同省担当記者)という。ゼンショーHDには10年前に入社し、海外戦略を担当してきた。

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吉野家HDの社長の経歴が店に立って牛丼を売るところから始まっている意味は非常に大きい。創業以来の味を守ることに腐心する姿勢が鮮明だ。その方針を代々の社長が愚直に貫いたことで「牛丼といえば吉野家」というブランド力を維持してきた。ゼンショーHDのすき家がトッピングによって牛丼にさまざまなバリエーションを加えているのとは対照的だ。

牛丼にそれほどこだわりが見られないゼンショーHDの原動力は2代続く東大出身らしい緻密な戦略である。まず、机上でシミュレーションして、M&A(合併・買収)によって「ココス」「ロッテリア」「なか卯」「ジョリーパスタ」など外食企業を次々に傘下に収め急成長した。

「東大DNA」vs「3代続けての叩き上げ」による牛丼対決。第二章がどう展開していくのか、目が離せない。(文中敬称略)

田中 幾太郎(たなか・いくたろう)
ジャーナリスト
1958年、東京都生まれ。『週刊現代』記者を経てフリー。教育、医療、企業問題を中心に執筆。著書は『慶應三田会の人脈と実力』『三菱財閥最強の秘密』(以上、宝島社新書)、『日本マクドナルドに見るサラリーマン社会の崩壊/本日より時間外・退職金なし』(光文社)ほか多数。
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