看護師になりたいだけなのに

 高校に進学すると、レイラは大学の看護学部に進み、看護師になりたいと思うようになった。入院していた病院で、病気の赤ちゃんを見たのがきっかけだ。たくさんの管がつながれ、苦しそうだった。その姿に、心が締め付けられた。自分が代わってあげられたらとまで思った。小さな命の力になりたい。そうして、看護師を目指し勉強するようになった。しかし、そのころから追い打ちをかけるように「不法クルド人は強制送還しろ」などのヘイトスピーチが激化した。

 やがてレイラは、外出することが怖くなった。クルド人だと分かれば、罵倒され、直接「出て行け」と言われかねないためだ。どうしても外出が必要な時はフード付きのパーカーを着るようになった。外ではフードをすっぽりかぶり、マスクをして、クルド人だと絶対に分からないようにした。

 日本で生まれ、日本語をしゃべり、頭で何か考える時の言葉も日本語だ。友人の大半も、日本人。唯一の楽しみは友達と韓流アイドルのライブに行くことだった。中身は日本人だと思っているのに、日本にいることが許されないのだ。一方で、一度も行ったことがないトルコでは、言葉も文化も違う。そこで暮らしていけるとは、とても思えなかった。(わたしが生きていく場所はないの?)。自問自答を繰り返し、自分の存在を消したいとまで思い詰めた。

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 ただ、2025年の春からは、悩むのに疲れ、「どうでもいいや」という心境になっていたという。フードもマスクもせずに、外出できるようになっていた。