山形県は麺類王県だ。山形そばは挽きぐるみのそば粉を使い、やや黒っぽい、硬めの田舎そばが特徴で、板そばや冷やし鶏そばなどとして食べられている。東京でも最近、山形そばの店が増えている。銀座の「山形田」、神田の「河北や」、西新宿の「肉そば家 笑梟(フクロウ)」など。そして、西武線野方駅近くにも「山形のおいしいお蕎麦とお米 もがら」が7月末にオープンした。
天童の観光名所から拝借した店名「もがら」
野方駅を南口側に降りて、商店街を南下する。左手路地奥にはもつ焼き「秋元屋」が見える。昔は居酒屋の達人・浜田信郎氏とよく行っていた。さらに進むと野方区民ホールと小さなバスターミナルがあり、その前に「山形のおいしいお蕎麦とお米 もがら」が営業していた。
最初に伺ったのは8月の初旬の土曜日だった。店は6人ほどのカウンターのみだが、カウンターは広くゆったりして落ち着いた雰囲気である。
メニューはいたってシンプル。基本は「冷たい肉そば」と「温かい肉そば」(各700円)で、「冷たいおろし肉そば」(800円)がある。サイドメニューは「山形米だしごはん」(200円)、「山形米おにぎり」(150円)。
ひとりで切り盛りしていた女将さんに店名の由来を聞いてみた。「もがら」という名前は、天童市上貫津(かみぬくづ)にある風穴や冷水の泉がある観光名所「ジャガラモガラ」から拝借したそうだ。
「冷たい肉そば」はきりっとしまった濃い目の味
まずは、「冷たい肉そば」(山形弁では「つったい肉そば」)を注文。注文後、やや黒い生そばを大きな鍋で茹で始めた。山形の製麺所に特注したそばだそうで、そば粉は山形県産そば粉「でわかおり」を使用している。3分ほど待って「冷たい肉そば」が登場した。
つゆは鶏とかつお節から出汁をとったもので、山形県や福島県などの山岳地帯で親しまれた味だそうだ。きりっとしまった濃い目の味。返しは地元の醤油を使っているのだろうか、やや華やかな香りが広がる。
鶏チャーシューは親鳥のモモ肉を別に甘辛く炊き出したもので、コリコリとした食感がよく、しっかりと味が染みている。
脂分はほとんど落ちていて、つゆには脂が一切浮いていない。丁寧で綺麗な出来上がり姿である。麺は想像以上に硬く色黒である。虎ノ門の「港屋」ほど太くはないが、その系統の麺である。