まずは「3巻」、次は「11巻」……一歩一歩かさね、100冊超・1億部の金字塔を打ち立てた

 実際、『はじめの一歩』連載では、いくつもの目標を自分に課し、そしていくつもの記録を塗り替えてきた。

「1つ目標をクリアしたら、次の目標があるじゃないですか。そこに行くだけなんで」

 最初は『はじめの一歩』に自信を持てず、「また打ち切りになるかもしれない」と不安を感じながら一歩を踏み出した。『一矢NOW』『シグナルブルー』はどちらも2巻しか単行本を出せなかったから、当時の目標は「単行本で3巻を出すこと」だった。

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「いつか描き直したいなあと思っていました。」とXに投稿した1巻の表紙。左手に右手用のグローブをはめたような状態になっており、138巻の表紙で正しい形に修正した ©石川啓次/文藝春秋

 その次は、11巻まで続けること。それは、アシスタント時代にお世話になったマンガ家の橋本きんいちさんが、『NON STOP!恭兵』という作品で11巻まで出していたからだ。

 無事に11巻を出すと、次は24巻を目指した。『はじめの一歩』の連載前、週刊少年マガジンで一番人気だった『バツ&テリー』(大島やすいち)が24巻で完結していたのが理由だ。

 こうして、1つ目標をクリアするたびにすぐ別の目標を立ててきた。

「当時、少年マガジン系で最も単行本の巻数が多かったのは『釣りキチ三平』(矢口高雄)で、全67巻(番外編含む)でした。これを超えても、別の雑誌には『こち亀』(こちら葛飾区亀有公園前派出所/秋本治)や『ゴルゴ13』(さいとう・たかを)があります。上には上がいるんです」

「上には上がいる」。そう自覚すれば、読者アンケートで何度1位になっても、単行本がどれだけ売れても、気が抜けなかった。

 そこには、やると決めたらとことん突き詰める森川さんの性格も影響しているはずだ。

 趣味の麻雀はプロ級で、2024年には麻雀界のトッププロ32人が名を連ねた『麻雀オールスター Japanext CUP』で優勝し、賞金300万円を得ている。同じく趣味の釣りでも、プロが参加する大会に出場してきた。3年ほど前からはガンダムのプラモデルにはまり、自ら組み立てて塗装したガンプラの画像をしばしばXに投稿。そのクオリティの高さが、ファンの間で話題になっている。

「もしかしたら趣味でも目標を設定してるんですか?」と尋ねたら、「そんなことはないです。いつの間にかそうなっているんです」とのこと。

 仕事も趣味も、「上には上がいる」。だから、一歩一歩、上を目指す。その積み重ねで2023年7月14日に到達したのが、『はじめの一歩』累計発行部数1億部だ。