これまで145巻の単行本を刊行し、35年以上も連載が続く『はじめの一歩』。時折休載することもあり、続きを読みたいと願う熱心なファンからは「休載しすぎ」「筆が遅い」と声が挙がることも。

 そうした意見について、作者の森川ジョージさん(60)はどう考えているのか。最終回の構想などとあわせて、話を聞いた(インタビューは1月に実施)。

ファンからのさまざまな声を、森川ジョージさんはどう受け取っているのか? ©石川啓次/文藝春秋

「試合結果もだいたい決まっている」今の目標は、最終回を描くこと

 常に目標を設定し、それを超えてきた森川さん。「いまの目標はなんですか?」という質問に、「一歩の最終回を描くこと」と答えた。すでに構想はあるという。しかし、その通りになるのかは森川さんにもわからない。

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「試合結果もだいたい決まっているけど、それをひっくり返したことがけっこうあるんですよ。例えば一歩と伊達の試合(日本フェザー級タイトルマッチ)は一歩が勝つ予定でした。その頃、少年マンガの主人公は負けないというのが主流だったのに、一歩を負けにしちゃったんです。僕が結果を決めて、こうなってくれなきゃ困るっていう書き方すると、極めてつまんないんですよ、マンガって」

 この話を聞いて、『北斗の拳』の原作者、武論尊さんも「先のことなんか、なにも決めていない」と言っていたことを伝えた。すると、森川さんは深く頷いた。

「わかります。僕は担当とも打ち合わせをしないから、僕だけで決めるんですけど、いつも流れに任せている感じです。試合結果についても勝つか、負けるか、半々という感じですね。でも太い幹はあって、その通りには進んでいます」

最終回の構想は決まっているという ©石川啓次/文藝春秋

『はじめの一歩』のファンにとっては、最終回と同じぐらい気になるのが、主人公の一歩と最大のライバル、宮田一郎の関係だろう。一歩がプロデビュー前にスパーリングで2度戦って1勝1敗。その後はすれ違いが続き、プロになってからは対戦していない。2人が拳を交えることはあるのだろうか?

「僕のなかで、2人は何度も戦っています。一歩の試合を描いている時にシミュレーションすると、一歩が勝ちます。宮田の試合を描いている時にシミュレーションすると宮田が勝ちます。だからまだ今じゃない、均衡した時にやらせたいなと思っていたら、一歩が引退しちゃいましたね(笑)」

 引退後もなにかと思わせぶりな動きを見せている一歩の動向も、気になるところ。試合結果も含めて展開が読めないのは、森川さん自身が先のことを決めていないからだった。