累計発行部数は1億部超、現在145巻まで刊行しているボクシングマンガ『はじめの一歩』。作者の森川ジョージさん(60)は無類のボクシング好きとして知られる。
そんな森川さんがこれまで目にした中で衝撃を受けたというボクサー2人や、自身について「絵が上手くない」と語り、デビューから3作連続で打ち切りになったのち、『はじめの一歩』では35年以上にわたる超長期連載を続けられた理由や考え方について話を聞いた(インタビューは1月に実施)。
森川ジョージが衝撃を受けた「2人のボクサー」とは?
子どもの頃からボクシングが好きな森川さんは、『はじめの一歩』の連載で多忙な今も大きな試合があると観戦に行く。個性豊かなキャラクターを描いてきた森川さんが度肝を抜かれたボクサーは2人。1人目は、1995年に日本人で初めてWBA世界ミドル級チャンピオンになった竹原慎二だ。
「マービン・ハグラーがいたミドル級で、日本人がタイトルを獲るとは思っていませんでしたからね。一番ショッキングでした。竹原が勝って以来ですよ。もう日本人の可能性を否定しちゃいけないと思ったのは」
どんな選手が出てきてもおかしくない。そう思っていた森川さんの想像をはるかに超えたのが、井上尚弥だ。「まさか、井上みたいな完成されたボクサーが出てくるとは思ってもみなかった」と語る。
「デビューして2戦目、タイ人の選手と対戦した試合を観ました。相手がガーっと前に出てきた時に、後ろ下がりながら左フックを当ててKOしたんです。あんなの、メキシコ人しかやらない技ですよ。あの勝ち方を見て、とんでもない選手が出てきたと思いました」
2013年1月のプロ2戦目で森川さんを驚嘆させた井上尚弥はその後、バンタム級とスーパーバンタム級で4団体統一王者になるという誰も想像できないような偉業を成し遂げた。
その井上尚弥にけん引されるように、続々と有望な日本人ボクサーが登場し、現在、日本にあるチャンピオンベルトは、ぜんぶで11本(そのうち井上尚弥が4本/4月末時点)。いま、まさに日本ボクシング界は黄金期を迎えている。「こういう時代が来ると思っていましたか?」と尋ねると、大きく頷いた。
「思ってました。どんな記録も塗り替えられますからね」
「どんな記録も塗り替えられる」。これは、自分自身に向けた言葉でもあるのだろう。
