「勝たせるのが仕事じゃない」ボクシングジムを経営する中で意識していること
『はじめの一歩』の主要なキャラクターにはモデルがいることで知られており、森川さん自身をモデルにしたキャラクターもいる。鴨川ジムでお金の管理、対戦相手との交渉、会場の手配などを任されている敏腕マネージャーで、麻雀も釣りもプロ級の八木晴彦だ。
「まだマンガでは明かしていないけど、八木ちゃんは会計士の本業を持っています。本業があって、マネージャーをやりながら麻雀も釣りも上手いなんて、最高じゃないですか」
「僕、八木ちゃんになりたいんですよ」という森川さんは、ボクシングジムの会長でもある。1993年、東京都足立区に設立したJB SPORTSボクシングジムだ。
ホームページには、「プロ・プロ志望のみ募集。(中略)『絶対にプロになる。チャンピオンになる!』という強い意志とやる気を持った方を募集します」とあり、一歩が所属する鴨川ジムのような雰囲気を感じさせる。
僕が後楽園にボクシングの試合を観戦に行った際、セコンドにつく森川さんを見たことがある。厳格な指導で知られる鴨川ジム会長、鴨川源二のように、「森川さんも選手と世界を目指しているんですか?」と尋ねると、苦笑した。
「そういうのはまったくありません。スタッフには、勝たせるのが仕事じゃない、無事に家に帰すのが仕事だよっていつも伝えています。たまにセコンドにつきますけど、無事にリングを降りてくれた時はホッとしますね」
これは意外な回答だった。鴨川会長のように、選手がへばりそうになった時、背中に張り手を飛ばすこともないのだろうか?
「あんな、選手の集中力が乱れるようなことやりませんよ」
……やはり、鴨川会長とはまるでキャラが違うようだ。マンガが売れるようになってもプライベートの生活はほとんど変わらなかったと先述したが、ジムの運営には巨額の資金を投じてきた。しかし、それは決して趣味ではない。
「ジムって、毎年数千万円っていうお金がかかるんですよ。以前、ほかの人に運営を任せていた時は赤字でしたが、僕が経営に携わるようになって黒字になりました」
この話を聞いて、確かに森川さんは八木ちゃんタイプなのかもしれないと思った。
