つまり、心理的なインパクトという点では、「恋人ができた」という出来事のほうが、法的な手続きである「結婚」よりも大きい可能性があるのです。結婚は、その延長線上にある社会制度的な節目にすぎないとも言えます。
成熟している人ほど結婚を選びやすい
しかしながらその一方で、「既婚者は落ち着いていてしっかりしているものではないか」、という印象を持つ人がいることでしょう。ただし、それは結婚生活が人を変えた結果というよりも、「もともと情緒が安定していて、信頼できる人ほど結婚しやすい」傾向があるという、選抜による効果によって生じる可能性が考えられます。
結婚というライフイベントが人を成熟させたのではなく、成熟している人が結婚という選択をよりしやすい、という考え方です。
さらに、結婚の前後には「予期効果」も観察されます。
まだ結婚していない、結婚を控えた時期に、人生満足度や勤勉性が一時的に上昇する傾向がよく観察されるのです。しかしその一方で、結婚後しばらく経つと、その上昇は元の水準へと戻ってしまう傾向があることも、研究の中で示されています。人は、ネガティブな出来事だけでなく、ポジティブな出来事に対してもしだいに慣れていき、それが「あたり前」になっていくものなのかもしれません。
家庭という「繭」ができ、内向的に
もしかしたら「結婚すれば社交的になる」というイメージも抱くのではないでしょうか。しかし、実際のデータは少し違う方向性を示しています。結婚後に外向性や開放性が上昇するどころか、わずかに「低下する」傾向が報告されているのです。
これは、幼虫が「繭(まゆ)」を経て成虫になっていくイメージに重なります。
パートナーという安定した社会的支えを得ることによって、新しい人間関係や刺激を外に求める必要性は、結婚前よりも相対的に低くなる可能性があります。「家庭」という安心できる「繭」の中だけで生活が完結しやすくなり、その結果として活動の範囲が内側に向くのです。これが、外向性や開放性が平均的に少し低下する、という現象にあらわれてくるという可能性です。