先に紹介したのと同じ研究によれば、これから出産するという時期には、情緒安定性や人生満足度が一時的に上昇する「予期効果」が観察されています。これは、結婚前に生じる効果と似たような効果です。結婚するときだけでなく、新しい家族を迎えるという期待についても、それが生じる前に心理的な好ましい効果をもたらすのです。
しかし出産後、その好ましさは急速に低下していき、元の水準へ、あるいはそれ以下へと戻る傾向が示されています。まるで、赤ちゃんが生まれることによる一時的な高揚という意味で「ベビー・バブル」とも言えるようなこの現象は、結婚の時と同じように、ポジティブな出来事に対して人が次第に「あたりまえ」として慣れていってしまうことを示しています。
親になることが性格に及ぼす影響は、男女で同じ形では表れません。
社交性が低い男性が父親になると…
フィンランドの9年間にわたる調査データを用いて分析した研究によると、「性格が子どもをもつ確率を予測する」だけでなく、「子どもをもつことがその後の性格変化を予測する」という双方向の関連が見られています。
そして子どもを授かることは、神経症傾向の一部で感情を抱きやすい傾向である情動性が高まることに関連しており、この傾向はもともと情動性が高い人や、子どもが二人以上いる場合に特に強く見られました。
さらに父親では、外向性の一部で他者との関係を形成しやすい傾向である社交性について、親になることに伴って複雑な変化が見られることも報告されました。もともと社交性が高い男性は親になるとより社交的になり、もともと社交性が低い男性はさらに低下するというように、もともと持っていた傾向が強まって分岐していくようなパターンが示されたのです。
子どもの存在が親の性格を変えていく
ここで重要なのが、「双方向性」という観点です。
親が子どもを育てるだけでなく、子どももまた親を変えていくのです。刺激に敏感でなかなか泣き止まず、夜泣きも多いような行動パターンをもつ子どもを授かった親は、慢性的なストレスのなかで神経症傾向が高まりやすい可能性があります。