『こうやって、僕は戦い続けてきた。』(菊池雄星 著)

 現在MLBのロサンゼルス・エンゼルスで活躍する著者は、中学生時代、身体能力や野球センスが他の選手より劣る自分がプロになるには「心臓(メンタル)と頭脳を鍛えて勝負するしかない」という生存戦略を立てた。

 岩手・花巻東高校野球部を経てプロの世界に飛び込むと、その戦略をアップデート。栄養学、解剖学、トレーニング理論など年間約200冊の本を読み込み、当時は敬遠されがちだったメンタルトレーニングにも挑んだ。そこから学び得たことを実践し、メジャーリーグにおける日本人左腕最多勝利数の更新、メジャーのオールスターゲーム選出などの成果が見えてくると、ひとつの持論が生まれた。それは《特別な才能がなくても、戦う術はある》。

 本書は、この「戦う術」を77の習慣として紹介している。たとえば「目先の一試合や一つのプレーに一喜一憂しないためにも、『大数の法則』(統計学の定理の一つ)を知っておく」「不調で不安を感じるときは、アメリカにある《No Rain, No Rainbow.(雨が降らなければ、虹は見られない)》という言葉を思い出したい」など、スポーツ選手のみならず一般のビジネスパーソンにも応用できるものがほとんどだ。それを実直な文章で綴っている。

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「著名人の書籍では本人の語りを元にライターが文章をまとめるケースがほとんどですが、本書は全編、約13万字を著者自身が書き上げました。しかも執筆に要した時間は、シーズン期間を含めた約4カ月。シーズン中は2週間に1度ほどのペースで原稿が4、5本届き、オフに入ると一気に加速。著者の桁違いの集中力、計画力を感じました」(担当編集者の中村悠志さん)

 また、イチロー氏、石井一久氏、ダルビッシュ有選手などが登場する豊富なエピソード、赤裸々に綴られる先輩や後輩、恩師、家族への思いも読者を引き込む。

「著者の人望も、本書のヒットの要因だと思っています。とくに地元での人気が凄い。オンライン書店の予約の約2割は岩手県民の方で、県内の多くの書店さんでも、本書の売り上げが1位になりました。著者がオフに入り、帰国後の打ち合わせの際にいただいた手土産が、地元の銘菓『奥州ポテト』だったんです。こういう細やかな気遣いが誰からも愛される理由だと感銘を受けました」(中村さん)

2026年2月発売。初版1万1000部。現在5刷4万3000部(電子含む)