“招かれざる客”

 しかし、誰よりも忠誠心を重視するトランプは、バンスの反戦思想を快く思っていなかったふしがある。それを示唆するエピソードを4月7日付けのニューヨーク・タイムズが紹介している。

 さる2月11日、ホワイトハウスのシチュエーション・ルームで、トランプと政権幹部はイスラエルのネタニヤフ首相らと会合を持った。しかし、そこにバンスの姿はなかった。この日、彼はアゼルバイジャンを訪問しており、急遽設定されたこの会合に参加できなかった。

トランプ大統領 ©時事通信社

 だが、トランプにとって、バンスは“招かれざる客”だったのではないかと勘繰る声もある。なぜなら、この会合では、イランの核開発計画の破壊や、民衆蜂起による新体制への移行、ホルムズ海峡の航行の自由の確保といった、ネタニヤフが提示した攻撃のシナリオに対し、トランプが「いいアイデアだ」と軍事作戦に賛同することになったからだ。

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 トランプが軍事作戦を実行しようとしていることが明らかになると、バンスは、イランとの戦争は中東で混乱を招き、多数の死傷者が生じる恐れがあるとトランプに伝えた。さらに、「新たな戦争を起こさない」というトランプの公約を信じて投票した有権者たちが、裏切られたと感じかねないと進言。統合参謀本部議長のダン・ケイン将軍と同様に、米国の弾薬や兵器の備蓄が枯渇することへの懸念も伝えた。

イランと協議後に会見するバンス氏と、クシュナー氏(左)、ウィトコフ特使(中) ⒸAFP=時事

 バンスの軍事作戦に対する考え方は、最も強硬に作戦を推進したピート・ヘグセス国防長官や、イランによる核兵器開発の永久阻止を訴える大統領に全面的に賛同するマルコ・ルビオ国務長官と相反するものだった。

 しかし、バンスは、トランプが大規模な軍事作戦を実行しようとしていることが確実視されると、立場を一転させる。目標を早期に達成するためには「圧倒的な武力」で臨むべきだと主張し、2月26日には、以下のように述べて、軍事作戦に同意している。

「私がこの案を『悪手』だと考えていることはご存知でしょう。しかし、もし大統領が実行を決断されるのであれば、私は全力で支持いたします」

 なぜ、バンスは翻意したのか? それは彼がトランプの“本質”を見抜いていたからかもしれない。

※本記事の全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(飯塚真紀子「本命バンスの窮地 イランという落とし穴」)。

※全文では、以下の内容が語られています。
・ボスの前では「借りてきた猫」
・対イラン外交は自身の政治生命を賭けた戦い
・MAGA派のトランプ離れがはじまっている

文藝春秋

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本命バンスの窮地 イランという落とし穴

出典元

文藝春秋

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