教頭は「中1の子どもに対してはきつい言葉だったかもしれません。厳しい指導ばかりで、気持ちが折れたり、恐怖を感じたりすることがないよう、子どもの心情をくんだ優しい対応も必要です。教職員に話をして改善を図っていきます」と約束。そののちにはA・Bの2人から電話があり「課題はやりかけでもいいから出してほしい。今後は提出が遅れるようなら保護者にも連絡する」と言われたという。

「ただ2人とも厳しい指導への謝罪は一言もなく、納得できませんでした。あれだけ大量の課題を出せば不備や間違いが出るのは当然なのに……」

 母親はそれ以降、カレンダーに印をつけるなどしてタカシくんの課題提出をサポートするようになり、タカシくんは「迷惑をかけてごめんなさい」と気まずそうにしながらも課題に取り組むようになった。

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旅行先の蒜山高原で乗馬を楽しむタカシくん

 母親は学校の対応に業を煮やしてタカシくんに何度も転校を勧めたが、タカシくんは首を縦に振らなかった。

「同じ小学校から20人が入学し、仲の良い友達が3人いる。部活動も楽しい。だから学校を変わりたくない、と言っていました。私は『じゃあ、もう少し頑張るしかないね』と言うほかありませんでした」(母親)

ノートに大きく書かれた「死にたい」の文字

 タカシくんの精神状態は悪化していき、2学期の終わりごろ、新品のノートの1ページに、大きく「死にたい」と書かれているのを父親が見つけたこともあった。

「どうしたの? と聞いても返事はありませんでした。スクールカウンセラーに相談するか聞きましたが、息子は嫌そうな顔で『いらない。話すことなんてない』と。面談するには授業を抜ける必要があり、クラスメイトに知られることなどハードルが高かったのでしょう。保健室も、利用制限が1時間と決まっていて、時間が経てば教室に戻される。逃げ場はありませんでした」

 2022年1月の冬休み明けに、B教諭から「家庭科のプリントが出ていない」と連絡があった際、タカシくんは「また怒られる、どうしよう」と激しく頭をかきむしった。プリントはすぐそばにあったが、これまでの指導による恐怖心が、正常な判断力を奪っていた。

「プリント1枚でなぜそこまで……と聞くと、『配られた現物でなければならない』と言うんです。現物がなくても新しいものをもらえば済む話なのに、それすら許されない空気があったのでしょう」

 2年生になり、担任が代わると、タカシくんは家でも新しい先生のことを笑って話すなど環境は改善したかに見えた。しかし、英語担当のA教諭・数学担当のB教諭は変わらず、締め切りを示さないまま大量の課題を出すスタイルも継続された。

クラスメイトとの関係性は良好だった

 夏休みに入り家族旅行に出かけても、タカシくんは沈んだ様子だったという。

「旅行先で『またここに来たいね』と言うといつもは『うん』と返事してくれるのですが、7月に蒜山高原という観光地に行った時は返事がありませんでした」

 そして2学期が近づいてきた8月17日に、夏休みの課題が大量に残っていることが判明した。

「通っている塾の先生と一緒に課題をやっているんだと言っていたので順調に進んでいると思っていたのですが、英単語の書き取りや夏休み明けのテストの過去問が大量に残っていました。タカシにどうするか聞いたら『まだ残っている?』ととぼけるような様子でした。課題が残ってるのはわかっていたけど、手をつけられなかったんだと思います」