来てもらってるんだから行ってあげなきゃとか、それがふつう
――嫌でした?
笠原 俺はそんなでもなかったけども。
――連載では鶏肉のレシピもいくつかご紹介いただきましたし、むしろいい思い出としてお話しされることが多い印象です。
笠原 だいたい、そんなもんですよ。常連のおやっさんとかに可愛がられて育つから、大人びて育つ。あと、自分の家が商売やってる家ってわりかし外食に行くと思うよ。他のお店の人も食べに来てくれるから、休みの日は行ってあげなきゃっていう、そういう感覚よ。マナーというかなんというか、お付き合い。
――いい文化ですね。
笠原 俺はそういう環境で育ったから、それがふつうかなって思っちゃう。来てもらってるんだから行ってあげなきゃとか。行くと親父が「大将も飲んでよ」ってビールをすすめたり、「お釣りはいいから」とかさ。子どものときからそういうもんだと思ってたから、ませて育つんだよ。
「いいよいいよ、もうつくっちゃったんだからもらうよ」
――笠原さんのレシピやお題への回答も、昭和のメモリーみたいなものがベースにあって、それに対して笠原さんは「そんなのファンタジーだよ」っておっしゃるんですけども、ある部分はそうかもしれないですが、やっぱりなにかしらの原風景をお持ちなんじゃないかと。
笠原 やっぱりそうですよ。人間は、なんだかんだ、育った環境で人間性ができますよ。だからうちの親父なんかは、外食いくじゃん。頼んでない料理が間違ってでてきても、「いいよいいよ、もうつくっちゃったんだからもらうよ」って。飲食業だから。
――笠原さんはどうですか。
笠原 俺もそうだから。「つくっちゃったんならもらうもらう」って。親父もそうしてたから染みついちゃったもんだよね。だからちょっとくらい待たされても怒らないし、「混んでんだからしょうがねえだろ」って俺も親父に言われたし、まだ出てこないのーとかも言わない。お会計のタイミングも、いま忙しそうだからちょっと待とうとかさ。あと混んできたらもう帰ろうとかね。席譲ってあげろとかね。そういうふうに育ったわけですよ。
撮影 志水隆/文藝春秋
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