〈すごい美人じゃないですか。何かのセールスですか。私はお金はありませんよ〉
〈ひどーい。それなら、ホテル代は私が出しますよ。私、家には帰りたくないんです。一日だけでもいいんです。お願いします〉
〈ごめんごめん。そういうわけじゃないんだ。何だか信じられなくてね……〉
2人は話が盛り上がり、予定を繰り上げて、その日のうちに会うことにした。麻衣のバイトの都合で、山田さんの自宅近くのターミナル駅で午後10時に会うことになった。〈これから向かいます〉という麻衣のメールが最後の履歴になった。
事件当日はクリスマスイブだった。2人は駅で会い、麻衣が山田さんの車椅子を押して近くの居酒屋に入った。
「実はクリスマスプレゼントがあるの」
2人は焼酎やカクテルを飲み、お互いにメールしていた内容を確認し、店を出るとタクシーに乗り、ラブホテルに向かった。
部屋に入ると、山田さんは小便がしたくなり、空のペットボトルに尿を出したが、麻衣は嫌な顔一つせず、それを便器に捨ててくれた。麻衣はカラオケを楽しみ、山田さんはいよいよ胸が高鳴って、雰囲気を作るためにビデオをつけた。
「実はクリスマスプレゼントがあるの。目をつぶってて……」
「こうかい?」
山田さんは麻衣に言われて両手で顔を覆った。それから2~3分経っただろうか。ガサガサとバッグから何かを取り出す音がして、いきなり体に「ドンッ」という衝撃を受けた。
目を開けると、麻衣が体ごともたれかかっていた。体の麻痺のせいで何が起こったのか分からなかったが、麻衣の手には包丁が握られていた。
