こういった、いわば「老舗の味」を守ってきたのがドラクエシリーズだったわけですが、この方向性とプレイステーションという新ハードの取り合わせが難しかったのです。

 PS、セガサターン、ニンテンドー64といった当時の次世代ゲーム機の特色は、なんといってもポリゴンによるリアルタイム3DCGにありました。となると、素直に考えれば「『FF7』の成功を参考に、ドラクエの世界も3DCG化しよう!」という企画が持ち上がるところなのですが、PSの3DCGは現在のようなリッチなものではありませんから、どうしてもペーパークラフトのように面構成が単純化されたカクカクしたものになってしまいます。

『FF7』はそのような単純な面構成でも表現しやすいキャラクターやモンスターを、PSのハードスペックに合わせてデザインするという手法をとりました。いまや世界的な人気キャラクターであるクラウドのツンツンと立った髪形は、そういう技術要件から導き出された最適解であるという側面もあります。

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『ドラクエ7』で採用されたグラフィック仕様

 ところが、ドラクエにはシリーズを通じて定番化しているモンスターが数多くおり、それらは作者である鳥山明さんのポップで洗練されたタッチがあってこそ「ドラクエらしい」のだという考え方がありました。

 今になって思えば、そもそもオリジナルの鳥山明さんのデザイン画と、ファミコンの初代『ドラクエ』でテレビ画面に表現されたドット絵にもかなりの差があるわけで、「ドット絵にアレンジするのはいいが、ポリゴンにアレンジするのはダメだ」という考え方は、あまり納得感がないようにも思えます。

 とはいえ、実際に当時のドラクエファンには「老舗の味」を望む保守的なユーザーも多く、エニックスとしてもあまり大胆なリニューアルをおこなってシリーズのブランドを棄損するリスクは負えなかったのでしょう。

 そして最終的に『ドラクエ7』で選ばれたグラフィック仕様は、戦闘画面はドット絵、マップ画面は背景のみ3Dポリゴンでキャラクターはドット絵、という非常に折衷的なものでした。