2002年11月、ゲーム業界のみならず日本中を激震させた「スクウェアとエニックスの合併」。当時エニックスの新入社員だった一人が『国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか?』(イースト・プレス)の著者渡辺範明氏だ。

 氏は社内放送で突然発表されたそのニュースに、社員たちから「ドッ」と笑いが起きた瞬間を鮮明に覚えているという。その他、当時の現場では何が起こっていたのか。同書の一部を抜粋して紹介する。

©graphica/イメージマート

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合併発表、そのとき……

 ファミコン時代からスーファミ時代の「追うもの/追われるもの」の関係から、ついにそれぞれが別種の強みを発揮し、比肩するライバル関係となったFFとドラクエ。「さあ、ここからスクウェアとエニックスのさらなる競争の火ぶたが落とされる!」というところで思いがけない出来事がおきます。

 なんと、スクウェアとエニックスという2つの会社が、2003年4月1日にまさかの合併をすることとなったのです。

 ちなみに僕がエニックスに新卒で入社したのはこのちょうど1年前、2002年4月でしたから、この時点では入社1年目をようやく終えたばかりの、いわゆるペーペーでしかありません。そんな僕も含め、ほとんど全ての社員にとってこの合併はまさに青天の霹靂でした。

 今回はドラクエ・FFの各作品論の前に、まずスクウェア・エニックス合併の件を語っていきましょう。

 2002年の11月。いつものように午前11時に出社すると、これまで一度も使ったことがなかった社内放送が流れ、「社員は全員、1階のロビーに集合してください」というアナウンスがありました。「ん? 避難訓練でもするのかな?」とたいして考えもせずにゾロゾロと社員たちが集まったところ、当時エニックスの社長だった本多圭司さんが前に立ち、こういったのです。

「エニックスは、株式会社スクウェアと合併します」

 それを聞いた僕ら社員からは、「ドッ」という笑い声が起きました。

 人間というのはあまりに予想外のことがあると笑ってしまうものなのか、あるいは本当に冗談としか思えないような発表だったせいかわかりませんが、この瞬間のみんなのリアクションと、その後の「えっ、ああ、マジなのか……」というシリアスな第2波の訪れはよく覚えています。