この発表、今思えばかなり厳重に情報統制が敷かれていて、僕らのような平社員はもちろんのこと、課長、部長など管理職クラスでもほとんどの人は知らなかったようでした。おそらく経営陣と、合併準備で実働しなくてはいけない必要最低限の部署だけが知っていたのだと思われます(事前に情報が漏れてしまうと、株価への影響もありますから、当然といえば当然のことですが)。

 この午前中の発表の後、僕らゲームプロデューサー陣はみんな変なテンションになってしまい、「今日はもう仕事にならないな……」という謎の諦めが湧いてきて、「対策会議だ!」といって、昼からみんなで近所のオペラシティに飲みにいってしまいました。平たくいえばサボりなんですが、上司も先輩もみんないるからいいよね、という特例的なサボりです。

 もちろん「今後自分たちがどうなっていくのか?」という不安もありましたが、むしろ「ドラクエのエニックスと、FFのスクウェアが合併」という、まるで子供が考えたような展開に、正直なところ、面白さを感じていたのも事実で、みんなで盛り上がり、その日はなんとなくお祭り感があった、という記憶があります。

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異なる企業文化の交流

 その後の実際の合併に向けた動きですが、それまでスクウェアとエニックスは同業者としての交流は普通程度にあったものの、やっぱりライバル企業でもあり、何より企業文化に大きな差がありました。合併直後はお互いに「オレたち流を護りたい」という意識も強かったと思います。

 僕は当時エニックス側の人たちしか見ていませんが、例えば、部長がスクウェア側のメンバーと顔合わせに行く際、「一発かましてくるぞ」的なことをいって、勇んで出かけていったのが印象的でした。

 僕自身はエニックス時代を経験している最後の新卒入社世代なので、実質的には合併前の1年間しかエニックスを経験していないわけですが、やはり社会人としても、プロデューサーとしても、最初に仕事のやり方を叩き込まれたのが「エニックス流」だったので、エニックスのメンバーにも、企業文化にも、かなり思い入れがあります。