ドット絵をアニメーションさせる労力

 また、戦闘シーンはまさにドラクエの伝統芸といっていいドット絵で構成されていますが、ここについても単にファミコン時代やスーファミ時代のまま解像度を上げているのではなく、なんと全モンスターに攻撃アニメーションを持たせています。

 実は3DCG化の最大のメリットは「動かす(角度を変えたりアニメーションさせたりする)のが簡単」ということであり、つまり逆にいえば「2Dのまま動かす」ことはもっともめんどくさい、労力とコストが際限なくかかる手法だといえます。

 しかし『ドラクエ7』はわざわざそれを選び、すべてのモンスターで「鳥山明らしい味わい」を崩さないまま、みごとな攻撃アニメーションを持たせました。この仕様は本当に労作というほかないですが、肝心のユーザーにはありがたみが伝わりづらく、またしても損なイメージを持たれてしまっています。

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PSの性能のどこに注目するか

 このように、映像の見せ方としてはかなり損をしてしまっている『ドラクエ7』ですが、ゲーム全体としては何を目指していたのでしょうか。

 ポイントは「プレイステーションというその時点ではとても革命的だった新ゲームハードをどう使うか?」ということです。前述したように、FFシリーズはPSのハード性能を、新しい世界観やキャラクターのドラマを「映像美」として見せることに使いました。これはいわば、ゲームの語り口の「質的転換」といえます。

 ではドラクエはどうかというと、実は「量的転換」を意図していたのではないかと思うのです。

 PSソフトの記録媒体はCD-ROMですから、ファミコン~スーファミ時代のROMカートリッジ方式とは比べ物にならない大容量でした。しかもCD-ROMは(大作RPGの多くがそうしていたように)複数枚組で販売することができるので、理論的にはいくらでも長いゲームを販売することができるのです。

 実際、『ドラクエ7』はクリアまで60~70時間を要する(当時としては)超大作で、『FF7』の30~40時間と比較して倍近いボリュームがありました。

 一説には『ドラクエ7』のシナリオはA4用紙でなんと1万6000枚に及んだといわれています。僕がエニックスに入社した当時はまだ紙の開発資料がファイルに束ねられている時代でしたが、事実、『ドラクエ7』の開発資料が納められたいくつかのキャビネットのうち、シナリオだけでひとつのキャビネットが埋まっていたような記憶があります。そう考えると、この1万6000枚もあながち言い過ぎではないかもしれません。

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