実際、1992年9月に発売された『ドラクエ5』にはポケモンに先行し「モンスターを仲間にして育成する」システムが実装されています。つまりポケモンのアイディアは、部分的にはすでに陳腐化してもおかしくない状況にあったのです。
しかし、もちろん、その後に誕生する実際のポケモンは、このように不利な状況を払拭するほどの革新性をもつ作品となっていました。
次の項からは、初代ポケモンのゲームデザインの特徴を、3項目に分けてご説明していきます。
ポケモンのゲームデザイン(1)最終目的はコレクション
ポケモンのゲームデザインの特徴。なんといってもその筆頭は、「ポケモンのコレクションをゲームの最終目的に据えている」という点です。そしてこれこそまさに、先ほどの「交換の動機」の課題解決でもありました。
そもそも子どもの遊びには、昔から「収集」の要素がありました。昭和の時代のメンコ、ベーゴマ、切手、野球選手カード、仮面ライダーカードなどの収集はその代表的なものです。1980年代後半、「ビックリマンチョコ」のおまけだった「ビックリマンシール」は爆発的な人気を博し、社会現象となりました。
実際、田尻さんはポケモンにおける遊びの雛型になっているのは「昆虫採集」だとたびたび発言しています。これも子どもの収集欲によって駆動されている遊びの代表的なものですね。
こういった「収集欲」が普遍的に遊びの動機となり得ることはポケモン以前にも自明でしたが、問題はそのような「収集欲」が、メンコ、カード、昆虫のような「実体」を持たないデジタルデータでも成立するのか?ということでした。ここに誰も確信が持てなかったために、ビデオゲームにおけるコレクション要素はあくまで補助的な動機付けとして扱われ、ゲームシステムの根幹に据えられることは無かったのです。
そして実際、ポケモンに先行して発売された『ドラクエ5』や「女神転生」シリーズ(1作目は1987年9月発売)でもモンスターを仲間にして育成するシステムは搭載されていますが、ゲームの最終目的は最終ボスを倒してシナリオをオールクリアすることで、モンスターのコレクションはあくまでその「手段」という位置づけでした。
ポケモンはここを逆転させ、「シナリオのクリアはあくまでゲームの中間目標であって、真の最終目的はコレクション(ポケモンずかん)の完成である」という新しい価値観を提案したのです。
おそらく開発中には、この動機付けが果たしてプレイヤーを最後まで引っ張るだけの、十分な牽引力を持っているのかどうか、不安も大きかったことでしょう。しかし、そこの価値判断が迫られる局面が開発終盤に訪れます。
