過去の中国指導者たちは、人民服によって威厳と革命性を表現することが多く、感情を見せず静かな統率者像を演出する意図が強かった。
しかし近年、習氏はサミットや首脳会談など国際舞台ではスーツを着用するようになった。
それは単なる西洋化というよりも、力をつけた中国がすでに覇権国家の地位に上り詰めたことを前提に、他国に歩みよって国際秩序を担う「文明国家」であることを視覚的に示す戦略とも読める。
トランプ氏より少し明るいブルーのスーツで、ネクタイの赤もトランプ氏より鮮やかさを抑えたローズ系を選択したのも、格式張った度合いを下げて距離感を縮め、油断させる効果もあった。
「相手に親近感を与えながら、いかに主導権を握るか」という中国流の認知戦的な意味合いすら感じられた。
トランプがこのタイプのネクタイを締めているところは見たことがない
習近平主席が一貫してトランプ氏に寄せようとする一方で、トランプ氏はダークネイビースーツという自己流の軸を崩さず、ネクタイによって場面ごとの空気をコントロールしようとしていた。
中国に到着する際にトランプ氏が着用していたのは、淡い水色の斜めストライプタイ。幅広のストライプが入ったジャカード織で、シルク特有の光沢感もあり格は高いが、色味は淡く柔らかい印象を与える。中国の歓迎ムードの中で、相手に親近感を与える選択だった。
メインの首脳会談では、“トランプの象徴”とも言える赤のネクタイをチョイス。光沢のある素材に彩度の高い赤の組み合わせは、本来なら威厳や強さ、時には怒りさえ感じさせるものである。しかし今回は無地ではなくストライプに織られたもので、習氏ほどではないがトランプ氏側も歩み寄る意志を見せていた。

