上の世代が見せる「B面詐欺」というトラップ
竹下 「ネタバレ世代」とは何ですか?
坂井 旅行に例えると分かりやすいですが、今の時代、行く前にSNSで現地の綺麗な写真や動画を見せられすぎて、実際に行っても「写真で見たまんまだな」と感動が薄れてしまう。これと同じことが人生でも起きているんです。
仕事なら「管理職になったら辛いよ」といった、「B面」を見せられてしまうから、憧れじゃなくなってしまう。
竹下 上の世代の“ネタ”がバレてしまっているということですね。
坂井 そうなんです。ただ、これには一種のトラップがあると思っています。社会的成功者たちが、周囲からの嫉妬や攻撃の対象にならないために、防御策として「本当は辛いんです」とアピールしている「B面詐欺」の側面もあるからです。
でも、私は「人生のネタバレなんて絶対にされない」と思っています。なぜなら、タワマンに住むにせよ、「住んでどうだったか」という答えは自分が体験しないと分からないからです。客観的な価値ではなく、自分の心がどう動くかという「主観的な心の躍動」しかない。
竹下 あくまでも他人の答えは「n=1」にすぎず、自分で体験しないと分からないということですね。
坂井 L.A.ポールという哲学者の『今夜ヴァンパイアになる前に』という面白い本があります。その本にも「ヴァンパイアになったら自分の価値観そのものが変わってしまうから、『ヴァンパイアになったら自分はどうなるのか』は、ヴァンパイアになる前の価値観では分からない」といったことが書かれています。
例えば起業などもこれと似ていて、起業する前の価値観をもとにどれだけ計算したとしても、起業した後は前提となる価値観自体が変わっているからあまり当てにならない。
『理不尽仕事論』の最後のコラムにも「打算を置き去りにする」という話を書いていますが、損得という打算で考えるのをやめて、「どういう人生になるか知りたい」という好奇心で一歩を踏み出すことが、虚無感から脱出する鍵になります。(2回目に続く)

