ミュージックビデオも「短編映画」だった

映画『ムーンウォーカー』(88年)より。「BAD WORLD TOUR」の映像などが使われている。©AF Archive/Mjj Production/Mary Evans Picture Library/共同通信イメージズ

 マイケルは自身のミュージックビデオをショート・フィルム=短編映画と呼び、自分の出すアイデアに合うスタッフを起用していた。「スリラー」に、リアルな変身シーンで話題を呼んだ『狼男アメリカン』(81年)の監督ジョン・ランディス、特殊効果担当のリック・ベイカーが参加しているのはその一例だ。

 そうした背景もあってマイケルは名匠との仕事が多かったが、ニューヨーク生まれのマーティン・スコセッシ監督による約18分の短編映画「バッド」(87年)は、いささかシリアスだ。1985年7月12日、17歳の黒人少年エドモンド・ベリーが白人警官によって射殺された事件(スパイク・リー監督の89年公開作『ドゥ・ザ・ライト・シング』も同事件に着想を得ている)に基づき、奨学金を得て名門校に通う主人公が地元のハーレムに戻った際、昔の仲間に強盗をけしかけられるが、強い意志で思いとどまるというストーリー。治安の悪い地域でロケを敢行し、デビュー間もないウエズリー・スナイプスを相手に一歩も引かないナイーブなマイケルの演技は見応えがあるものになっている。

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 マイケル主演・原案・製作総指揮のファンタジー『ムーンウォーカー』(88年)はライブ映像とミュージックビデオを交えながら、後半は子供たちを麻薬漬けにしようと企む悪の組織(親玉はジョー・ペシ)と戦う物語。銀色の巨大ロボットに変形して悪を倒すマイケルが話題を集めた。「スムーズ・クリミナル」パートは、彼が最も敬愛するエンターテイナー、フレッド・アステアの主演映画『バンド・ワゴン』(53年)へオマージュを捧げ、同作のアステアと同じ白い帽子、白いジャケット、青いシャツの姿で、「ムーンウォーク」と並ぶ代名詞となる「ゼロ・グラビティ」を初披露している。