映画『Michael/マイケル』でも登場する、マイケル・ジャクソンが1982年にリリースした『スリラー』は、世界で最も売れたアルバムとされる。それは、MTVでこのミュージックビデオ(MV)が繰り返し放送されたのも大きな要因だった。MVの最高到達点とたたえられた本作がどうやって作られたのかを見ていこう。
ドタバタ喜劇のような20分ほどの短編映画に
2009年12月、芸術的価値の高い映画を保存する「アメリカ国立フィルム登録簿」にマイケル・ジャクソンの『スリラー』が登録された。ミュージックビデオ(MV)が登録されるのは初めてのことで、それ以降2026年4月時点でほかの登録はない。
まさに快挙だが、当然ともいえる。『スリラー』は米映画芸術科学アカデミーが規定するアカデミー賞受賞資格を持った短編映画なのだから。
きっかけはマイケルがジョン・ランディス監督の『狼男アメリカン』(81年)を観たことだった。この映画いちばんの見せ場が、主人公の肉体が狼男に変形していく様を克明に描いた変身シーン。
それを目にしたマイケルは、構想していた『スリラー』のMVで自分もモンスターに変身しようと思いつく。ストーリーを持った映画仕立てのMVを考えていたマイケルは、さっそくランディスに監督を打診した。
ランディスが出した条件は、このMVを「短編映画」にすること。ストーリー性のあるMVと聞いた彼は、サイレント時代に流行したドタバタ喜劇のような20分ほどの短編映画にしたいと考えたのだ。マイケルも映画にするアイデアに賛同し、1983年の夏『スリラー』の製作がスタートした。



