代理人から18歳の娘による手紙が読み上げられている間、阿部氏は憮然とした表情で視線を落とし、両足を肩幅よりやや大きく開いてしっかりと立っていた。左手の親指が細かく動いて組んでいた右手を触り続けていたが、身体が揺れることはなかった。
その姿からは自分がやってしまったことを後悔するというよりは、行為の事実は認めるもののまだ頭の整理が追い付いていない印象を受けた。
「(辞任は)もちろんそうですし、今朝山口(寿一)オーナーにもお会いして、それを受理して頂きました」
監督辞任について聞かれると、阿部氏は両手を組み直し、右手で左手を強く握りながらそう辞任を認めた。固く握りしめられた両手は、巨人の監督を辞めるという決断の辛さを表していたのだろう。
最大の動揺を見せた25秒の沈黙
この会見で阿部氏が最大の動揺を見せたのは、シーズン途中で離れるチームへの思い入れを聞かれた時だった。
「いやぁ……」と口ごもり、口元が歪み言葉が出てこない。25秒という長い沈黙の中、抑えきれなくなった感情が涙とともにあふれ出した。それでも涙をぬぐい、鼻をすすりながら声を絞り出すように「こういう形で去るということは、本当にご迷惑をかけているなと思います」と言い切った。自分が巨人にとっての迷惑になるだなんて想像したこともなかったのではないかと思わせる苦悩ぶりだった。
チームと話ができたのかと聞かれた時に口から出た「橋上(秀樹)さんとは話せたのですが、もうなんて言っていいかわかんなかったので……。ごめんなさい」という一言と、その落ち着かない仕草が巨人軍前監督の本音の全てを示しているように見えた。

