トップ層の顔ぶれが固定している女流棋界において、その厚い壁を崩しつつある若手が23歳の磯谷祐維女流初段だ。2025年度には女流棋士で勝率1位(8割2分5厘)、連勝1位タイ(14連勝)を達成し、2026年3月と5月に2回、タイトル戦一歩前の挑戦者決定戦を経験した。
実戦派の磯谷女流初段にとって、18歳で上京し強い相手と指す機会が増えたことは大きな転機になった。インタビュー中編では上京の前後のこと、女性では歴代最高レベルの実績を残しながら腕を磨いたアマチュア将棋大会のこと、山崎隆之九段への二度目の弟子入りのことなどを聞いてみた。(全3回の2回目/つづきを読む)
磯谷祐維(いそや・ゆい)女流初段
2003年1月15日生まれ。岐阜県各務原市出身。山崎隆之九段門下。2017年に関西奨励会入会。翌年退会。女子アマ王位戦で3回、女流アマ名人戦で2回優勝するなど女性アマトップとして女流公式戦に多数出場。2023年に研修会に再入会し、9月にLPSA所属の女流2級に。2024年1月にYAMADA女流チャレンジ杯で優勝し女流初段昇段。
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奨励会の退会が決まった日のこと
――奨励会の同期入会で、女子は磯谷先生1人でした。指す仲間を作るのも大変だったと思います。山崎九段はそんな弟子に対してどのように接していましたか?
磯谷祐維女流初段(以下、磯谷) 厳しく、熱心に面倒を見ていただいたと思います。こういう勉強をしなさいと、具体的にご指導いただくことも多かったです。
一緒にカフェに行って、詰将棋を出してもらい、一緒に解いてくれたこともありました。「詰将棋は図面を眺めて解くのではなく、パッと見て頭に入れてから解こう。さあ、覚えた?」みたいな感じで。
それなのに私は「そりゃ先生のほうが強いんだから(自分より早く)解けるでしょ」なんて思ってしまっていて、しっかり努力できていませんでした。例会の成績は振るわず、入会時の6級から昇級することなく、7級に落ちてしまいました。
――7級で2勝8敗以下の成績をとると強制退会です。入会から1年経たないうちに、奨励会を退会することになりました。
磯谷 はい。入会したのが中3の9月で、退会が決まったのが高1の7月の七夕の日でした。その日のことはよく覚えています。
旧関西将棋会館のすぐそばにファミリーマートがあって、例会の日は、そこで朝ごはんを買って食べるのがルーティーンでした。その日付の入ったレシートは4年くらいずっと捨てられませんでした。悔しくて。
退会が決まったのはその日の2局目。当時幹事だった北浜先生(健介八段)、西川先生(和宏六段)の前で泣いてしまい、「またここに戻ってくるのを待ってるよ」と温かい言葉をかけてもらったのを覚えています。
今にして思うと、自分は努力が足りていませんでした。だから、悔しいと言える立場でもなかったです。




