この発言など、余がかつて劇団「東京壱組」の看板女優だった1990年代に語っていた「精神的にアナーキーでいることが必要」という言葉にも通じる。おそらく彼女の生き方は、舞台俳優としてこの仕事を始めたころから本質的に変わっていないのではないか。
台湾にルーツを持ち、いとこも俳優
俳優としての活動の一方で、著名人の家族の歴史をたどるNHKのドキュメンタリー番組『ファミリーヒストリー』では2010年よりナレーションを務め、おなじみとなっている。2012年には同番組で余自身のルーツもとりあげられた。
余は、父親が台湾出身の中国人、母親が日本人で、自身の国籍は父と同じく中華民国(台湾)である。ただ、本籍地は台湾ではなく中国の広東省となっているのが子供のころから謎だったという。それを聞いた『ファミリーヒストリー』のスタッフが調べたところ、父方の家系は清朝の乾隆帝のころに広東省から台湾に渡った客家(漢民族のなかでも特別の文化とアイデンティティを持つとされる人々)だとわかった。
祖父は戦前に当時日本の統治下にあった台湾で事業に行き詰まり、妻子を連れて日本に移住、終戦を挟んで神戸から東京へと流れながら、さまざまな事業を手がけてきた。両親は1956年に長女の余を儲けた当時、池袋で音楽喫茶を営んでいた。店にはミッキー・カーチスや水原弘など当時の人気歌手がバイトで歌いにきたり、クレイジーキャッツでブレイクする前夜のハナ肇も家が近所だったので通い詰め、頼むとよく歌ってくれたという。
育ったのがそういう環境だったこと、また、いとこに俳優の范文雀がいたこともあって、余にとって幼いころから芸能界はわりと身近な世界であったようだ。