「じつは今回、見積書を2パターン用意しました」
ただ、ここで「あなたは予算が厳しいから自由設計は無理です。規格住宅しか買えません」などといえるわけがない。だから住宅営業マンは見積もり提示のとき、こういう。
……「じつは今回、見積書を2パターン用意しました。ひとつは“自由設計”で、もうひとつは“規格住宅”というものです」と。ここでお客さまは、価格の大きな違いを認識する。
「こちらは最近、発売開始した(じつは昔からあるのだが)“規格住宅”というシリーズです。これは、いままで自由設計でとくに人気のあった間取りを分析してシリーズ化したものなんです。間取りは決まっているものの、もちろん内部の仕様は自由設計同様、選べます。たとえば、これっ……この間取りなんか、お客さまから聞いた間取りに似てるところが多いんですよ。リビングはいちばん日の当たるここで、水回りはこちら……」と、冷静に聞けば当たり前の話をする。
なぜなら、部屋の間取りというものは、よほど斬新な間取り以外、説明のしかたにかかわらず「考え方」はすべて同じだからだ。
リビングはどんな家もいちばん日の当たる南側や南東側、ユニットバスやトイレ、洗面等の水回りは、どこの家も北側や北西に配置してあるもの。いくら自由設計とはいえ、北側にリビングのある家や南側に水回りがある家なんて、よほどの変人の家でないかぎり、ありえないからだ。そして営業マンはこう付け加える……。
「ここだけの話、会社はとにかく自由設計をお客さまにすすめるように、われわれ営業マンにはいってきます。そりゃそうですよね……これだけの価格ですし、いちばん利益出ますから。ただ、あくまで個人的には、この価格差でこれだけの違いなら、圧倒的にこちらの規格住宅がお得です。それと住宅ローンの返済額です。この規格住宅なら価格が違うので当然、銀行からの総借入額も抑えられます。もちろん銀行さんだって、お客さまが借りられる上限額いっぱいまで貸したがるでしょう。おそらく、この規格住宅なら自由設計より毎月の返済額が1万円以上は安くなります。私自身、住宅ローンを組んでいる立場から正直にお話ししますけど、“毎月の1万円”は大きいです。それに規格住宅というのは建売住宅とはまったく違います。内部のクロス(壁紙)や外壁の色、キッチンやユニットバスにも選択肢があります。そして何より、いままでご注文いただいた間取りのなかから、とくに人気のあるものを集約したものですから……」
