なんとかなっちゃうお客さまも実際多い

 と、上司の目を気にしているふうに、後ろをチラチラ見ながら、小声でそんなことをいう。つまり、こういうときだけ、さもお客さま目線の、お客さまに寄り添った提案をしている営業マンとなるわけだ。もちろん、これでも納得しないお客さまもいるが、これでなんとかなっちゃうお客さまも実際多い。しかし、この住宅営業マンの苦しまぎれの説明には数々の落とし穴が存在する。

 住宅営業マンが「規格住宅でもいろいろ選べる」とはいっても、その選択肢は明らかに少ない。

 自由設計の場合、キッチンやユニットバス、外壁の色や材質を10種類から選べるなら、規格住宅は2種類からしか選べなかったり、キッチンのワークトップ(天板)も人造大理石からステンレスになってしまったり、屋根も瓦屋根からスレート屋根へ、サッシもペアガラスから単板ガラスへ、玄関収納もイマイチ安っぽい感じ……と細かいところを数えたらキリがないくらい違うのが現実だ。

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 もちろんウソはいけないので、仕様の違いは打ち合わせのたびに「小出し」に説明していく。

 お客さまも「仕様決め」などで当初の展示場仕様とは大きく異なっていることに薄々気づいてはくるものだが、実際、物件完成後の引き渡しや引き渡し前の完工検査でお客さまが新築物件に足を踏み入れたとき、「あれっ! こんなんだったっけ?」とキツネに化かされたような感じでポカンとされることも多い。しかし、お客さまもこの内容で「契約」を結んでいる以上、何もいえない。

 ただ腐っても「新築」。当初のイメージとは異なるとはいえ、お客さまというのは、「家を持った」ことに満足してくれるものなのだ。

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