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食事だけは自立しているが、配膳した途端に誰かと競い合うように早食いする。
噛みもしないで一心不乱に口に入れるため、ときどき喉を詰まらせ、年に1回は窒息でコードブルーを鳴らす。
どんな食事も残さないのは彼の長所だが、与えられた菓子類も受け取って瞬時に口に運ぶため、売店で購入したスナックやパンは看護師が管理している。
「いきなりキスしてきたんですよ」
ある日のこと、認知機能こそ低下したものの健脚は衰え知らずでふだん病棟中を歩き回っている関口さんが自室のベッドで布団をかぶっている。声をかけても反応がない。珍しいことがあるものだと思いながら、ナースステーションに行くと「先生、ちょっと聞いてくださいよ」と不満をにじませた声が飛んできた。
170センチ近い高身長に外ハネしたボブがよく似合う20代後半の看護師・山本エリナさんだ。彼女とは同じジムに通っていることもあり、打ち解けた仲である。
「関口さん、いきなりキスしてきたんですよ」
「え、まじで? 口に?」
思わぬ報告についタメ口が出る。