派手な服を着て、お高く止まり、近隣住民にもろくに挨拶もしない。見習いの夫に対してヒステリックに怒る姿を何度も見たとの話もあり、家庭での主導権は完全に井上さんが握っていたようだ。
最初に疑われたのは「2人の男性医師」
殺人事件として捜査を開始した警察は、井上さんがホテルに戻ってからフルーツを購入していたこと、体内に精液(血液型は「O-非分泌型」)が残っていたことから、顔見知りの男性を部屋に招き入れ殺害されたものと推定。
まず、同行した2人の男性医師を疑う。が、両者ともに血液型が合わず、盗まれたと思われる現金が入っていたバッグの留め金の指紋も一致しなかったため容疑者から排除する。
次に警察が注目したのが、井上さんの交友関係だ。彼女はこれまで前記の講習会に何度も出席しており、参加者で唯一の女性。
いつも新しいファッションを着こなし「女王様」と冷やかされていた。実際、東京を訪れた際は毎晩のように孔雀の羽の夜会服や派手な色のダンスシューズ、つけまつげなどで着飾り、1人でダンスホールなどを遊び歩いていたこともわかった。
捜査線上に浮かんだ「第3の男」
やがて捜査線上に東京に住む1人の男性が浮かぶ。井上さんの出身校、九州歯科大学の2年先輩で、彼女と3年前から不倫関係にあった歯科医だ。
今回も井上さんが上京した24日夕方から25日の朝方にかけて密会しており、このとき、彼女は一緒に上京した医師2人に「親戚の家に行く」と嘘をついていたそうだ。
痴情のもつれで、この歯科医が犯行に及んだものと思われたが、鑑定の結果、これまた血液型や指紋が一致しないことが判明。
捜査に行き詰まった警察は彼女の行きつけだったダンスホールの男性客や講習会のメンバー、九州歯科大学の同窓生などを徹底的に調べ上げたものの有力な手がかりは掴めなかった。
美人女性歯科医、不倫。夜遊び。
事件が週刊誌の恰好のネタとして派手に報道されるなか、警察は本事件から2ヶ月半ほど後の1972年9月4日23時半ごろ、同じホテルで女性宿泊客が部屋に入ろうとしたところ、つけてきた男に鍵をひったくられそうになった事件にも着目。
