それ以来、トップ棋士と最強将棋ソフトが公式戦で戦う機会はなくなった。将棋ソフトのほうは、ソフト同士で対戦をくり返し、それ以降も進化を続けている。

阿部元監督の娘さんには、人間に相談を持ちかけるという選択肢もあった。

たとえば、友だちに対してである。なかには、家庭内暴力を受けた経験を持つ友だちがいるかもしれない。そうした友だちに相談してみるのだ。すると、AIと同じように、児童相談所なら匿名で相談できると助言してくれるかもしれない。

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しかし、そこには難しい問題がある。それがとてつもなく重大なことなのだ。

なぜ人間ではなくAIに相談したか

何しろ阿部元監督は有名人であり、公人である。娘さんも18歳ということなので、自分の身に降りかかったことを安易に友だちに相談すれば、いくら「秘密にしてね」と求めても、どこかでそれが広まってしまう危険性を察知したことだろう。「人の口に戸は立てられない」のたとえもある。

そこで友だちに相談を持ちかけることをためらうはずだ。それは友人以外の人間についてもいえる。人は、他人から秘密を明かされると、それを別の人間にどこかでもらしてしまう。職業的に守秘義務を守っているという場合でもなければ、秘密が守られることはない。

それに、相談を受けた側は、どこかでそれを自分の利益に結びつけようとする。徹頭徹尾友だちのために行動するような人間もいるかもしれないが、どこかで損得を考えてしまう。相談に乗ったことで、「恩」を売る。あるいは、現代的にいえば、「マウントをとる」ことにおよぶかもしれない。

人間には、相談役としてそうした問題が見込まれる。これも人類の歴史がはじまってからのことで、これまでは、それでも仕方がないので、私たちは人間に相談してきた。

ところが、生成AIは相談役として実に優れている。今、挙げたような弱点をまったく持っていないからだ。

永遠に“音を上げない”相談相手

「秘密保持」ということでは完璧である。AIに持ちかけた相談事がネットを通して拡散されることはない。