暴力そのものが日常化した現場のリアル

──他のスタッフは止めなかったのですか。 

水谷 誰も何も言わないし、暴力にみんな慣れてしまっているみたいです。そもそも患者さんに対して無関心。決められたシステムの中で最低限の業務だけやって、時間が来たら速やかに帰りたい。そんな人たちがほとんどだと。

『暴力病院 看護助手が精神科で見たもの』より ©︎水谷緑/竹書房

──暴力そのものに慣れてしまっているのでしょうか。

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水谷 なんとも思わなくなっちゃうんですかね。でも、毎日その現場にいたら、人の暴力を見ても何とも思わなくなりそうだな……とは思いました。患者さんも慣れているのか、暴力を振るわれてもやり返さないみたいです。

スタッフに対する偏見も根強い

──精神科で働く看護師に対しても、偏見があるとよく聞きます。

水谷 それは取材の中でも感じました。他の科に比べて少し下に見られるというか。

 他の診療科のように、患者さんの容態が急変して緊急対応に追われたり、心電図を読み解いて迅速な処置を行ったりする場面は、精神科では比較的少ないそうです。そうしたことが苦手な医療従事者は「お前は精神科で働いて来い」と言われることがあると聞きました。

 でも、精神科の看護師さんは大変な仕事です。患者さんの些細な変化から状態悪化をいち早く察知すること、信頼関係を築くためのコミュニケーション、その人らしさを引き出す工夫など、患者さん一人ひとりとどのように関わるかはすごく大切なことだと思います。

──取材した人たちが働いていた病院では、スタッフの退職も多かったそうですね。

水谷 他の病院で出禁になった人たちが集まる、最後の受け皿のような病院だったこともあって、全体的にモチベーションが低い雰囲気だったそうです。もちろん仕事の充実よりも給料や残業など待遇面だけで続けている人もいますし、どれが正解というのはないんでしょうけど。(つづく)

次の記事に続く 患者の体を“拘束せざるを得ない”事情も…精神科病院における暴力は「誰かを悪者にすれば解決する問題」なのか