10年単位で入院し続けているケースも
──水谷さんの作品『暴力病院』には、精神科病院に20~30年入院している女性が登場します。そういった患者さんは多いのでしょうか。
水谷 いえ。今の病院は、3ヶ月や半年、長くても1年以内での「早期退院」を目指しているところがほとんどだと思います。ですが、昭和から平成初期にかけて、精神医療の薬や福祉体制が整う前に入院した人たちの中には、その流れに乗れなかった人が今もたくさん取り残されているんです。
身寄りがいない、家族から引き取りを拒否される、受け入れる地域社会の基盤がない、あるいは本人も長年の入院生活で外で生きる自信を失っている。さまざまな理由から、10年、20年と入院し続けている人が、現在も数万人以上いると言われています。
──たとえ病院で暴力を振るわれたとしても、そうした患者さんは「病院のほうがいい」となってしまうのでしょうか?
水谷 病院の環境に慣れきってしまい、「外に出てもまた失敗するのではないか」と怯える人の話は聞きました。家族側も、過去に苦労させられた経験から面会にすら来ず、「戻ってきてほしくない」と望むケースも珍しくありません。
また、精神疾患に対する世間の偏見も根強く残っています。地域に戻ろうとしても、過去の病歴を知った周囲の人々が身構えてしまうような空気感がいまだにあるのだと思います。
──そこまで長期の入院になると、精神的にも無力化していきそうです。
水谷 自分で物事を考えられなくなったり、社会の仕組みがわからなくなったりする人は多いです。電車やバスの乗り方、電子レンジの使い方、スマホの操作すら知らない。退院してもすぐに日常生活で行き詰まってしまうため、事前に看護師と外出訓練などの準備を重ねるのですが、それでも退院直後は相当な苦労を伴うと聞きます。
──水谷さんは精神科クリニックの関係者にも取材されています。精神科病院と比べて、どのような違いを感じましたか?
