現地市民は観戦できる?
W杯全104試合のうち米国11都市で78試合、そのうち8試合がニューヨーク(ニュージャージー)で開催される。ニューヨークにもサッカーファンは多く、しかし、かつてない高額なチケットに手が出ない市民のほうが圧倒的に多い。
そこでニューヨーク市長のゾーラン・マムダニは、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長に直接交渉し、50ドルのチケット1000枚を用意した。今年のW杯における最安値のチケットだ。チケット当選者のために ニューヨークから隣州にあるスタジアムへの無料の送迎バスも出す。
マムダニは昨年、民主社会主義を掲げて当選した弱冠34歳の市長だ。託児所と市バスの無償化を公約とし、庶民の生活の安定を第一義としている。W杯もニューヨークで開催されるからには、ニューヨークの労働者階級が観戦できる価格でなければならないと主張してきた。
ダイナミック・プライシング(価格変動制)と公式転売によって110億ドルの収益を目指すインファンティーノ会長とマムダニ市長は全く異なる経済信条の持ち主だが、熱烈なサッカーファンである市長は会長と意気投合し、50ドル・チケットの交渉を成立させた。
5月25日、ニューヨーク市民のみが対象の50ドル・チケットのオンライン申し込みは開始から3分で5万件に達した。
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1000枚のチケットですべてのサッカーファンを楽しませることはもちろん出来ず、市長はリンカーンセンターなど市内5区の大型会場で無料の観戦パーティーも開催する。それぞれの区に暮らす人々による食とカルチャーのフェスティバル仕立てだ。
さらにW杯開催のわずか3日前、ニューヨーク州知事キャシー・ホークルとマムダニは、最終日7月19日に観戦パーティーをマンハッタンのセントラルパークで行うと発表した。5万枚の無料チケットを抽選により配布し、世界最大規模の観戦パーティーとする。発表記者会見は、多くの試合でチケットが完売していないことが報じられたタイミングで行われ、FIFAのCEOインファンティーノも出席した。
ニューヨーク市は総人口850万人のうち3分の1以上が世界各国からの移民であり、メキシコ、中南米、カリブ海、アフリカ、中東、東欧など、サッカーが非常に盛んな国々からの人も多い。インド系ウガンダ人である市長自身もその一人だ。サッカーファンの多彩な文化のセレブレーションは、現政権の反移民政策へのカウンターとなり得る。
